40歳を超えてからのモチベーション問題

【田中】お笑い芸人さんって、普通のサラリーマンよりも不安定な部分があるわけじゃないですか。

【山田】めちゃくちゃ不安定ですよ。

【田中】そういう中で、今後も続けたいと思えるのはどうしてでしょうか。というのも、40代に入ればもう20年ぐらい働いているので、当然、若かった頃の新鮮な気分はもうないはずです。そうした中で残りの20年をどういったモチベーションで働くのかは大きな問題になります。

【山田】これを言うとカッコよくなってしまうので非常に嫌なんですが……僕がお笑い芸人を続けたい理由、それは、これしかできないからです。

【田中】カッコいいです(笑)。

「これをやりたい」と「これしかできない」

【山田】これで、めっちゃ売れてたら本当にカッコいいんですけども(笑)。僕の場合、引きこもって完全に社会からドロップアウトしたという過去があって、職種とか条件とかを選ばなければ就職できたかもしれませんが、結局それもできなくて。養成所に入るために東京へ出てきて、売れるまでの間はもう本当にひどい生活でした。

田中俊之・山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)

相方とコンビを組んでからも、トントン拍子で売れたわけではない。本当にすごく苦しかったんですよ。でも、「これやめたら、もうホンマにやることないやん、俺」ってずっと思ってたんですよね。今だって同じですよ。何かこれがやりたい! っていうほかのものがない。やっぱりこれしかできないんですよね。

【田中】それはどの職業の人にも言えますよ。「もう自分はこれしかできない」って、特に40歳ぐらいでみんな痛感することじゃないでしょうか。

【山田】そうでしょ? 他にやりたいことなんてないでしょ? みんなそれをもっと大きな声で言っていいと思うんです。「これしかできない」っていう消去法的な部分と、同時に「これがやりたい」っていう部分、両方ありますよね。僕もやっぱりお笑いやって人を笑わせたいというポジティブな気持ちだってありますから。