【田原】最後にもう1つ。宅配便のラストワンマイルが問題になっていますが、ドライバー視点で言うと、どこに問題がありますか?

【松本】宅配は稼ぎに限界があるんです。たとえば某大手宅配便だと、1個運んで運送会社に140円入り、そのうち約120円がドライバーの取り分になる。もともと単価が安いうえに、どんなベテランでも1日に運べるのは100個くらい。毎日13時間から14時間動きっぱなしでも、日給は1万2000円前後です。ただ、宅配時には不在が2~3割あるので、それが解消できれば1日に120~130個くらい運べて、収入も改善されます。

【田原】不在が問題ですよね。宅配ボックスがもっと普及すればいいのに。

【松本】宅配ボックスを置くマンションは増えましたが、戸数に対して少なすぎます。ドライバーは朝一番で宅配ボックスに荷物を落とそうとするのですが、競争になって、結局落とせない人たちが続出する。それも非効率を生む原因の1つになっています。

【田原】宅配ボックスを大きくしちゃダメなんですか。

【松本】敷地やセキュリティーの問題があって難しいようです。

【田原】松本さんの会社は企業間配送のみで、宅配はやらないんですか?

【松本】私たちが直接受託して運ぶことはありませんが、ドライバーをスポット的にマッチングする形で貢献しています。ただ、宅配の現場は環境が劣悪なので、単に人を送って終わりにはしたくない。いま宅配現場のソリューションを開発中で、きちんと環境改善したうえでドライバーをマッチングさせていきます。

【田原】いまアマゾンはいろんな配送業者を使ってますね。松本さんのところにも話はあった?

【松本】ありました。が、やっていません。先程お話ししたように、宅配の現場環境は劣悪で、アマゾンはそれが顕著です。そういう現場を変えて、ドライバーが明るい未来を描けるようにすることが私たちの使命です。

松本さんから田原さんへの質問

Q. 田原さんの人生の転機は何ですか?

転機は3つありました。まず小学5年生の夏休みの敗戦。2学期が始まったら、同じ教師が1学期と正反対のことを言う。偉い人は信用できないと思いました。2つ目は、1965年にモスクワで開かれた世界ドキュメンタリー会議に参加したとき。それまで社会主義は素晴らしいと考えていましたが、ソ連には言論の自由がなく、間違いだとわかった。3つ目は、総理大臣を3人失脚させたとき。これで国が変わると思いましたが、結局何も変わらなかった。いまは総理に直接「間違っている」と提言するようになりました。

それぞれ自分の中で180度世界が変わりました。しかし、変化を恐れる必要はない。むしろ常識や自分の価値観を疑うことが大事です。

田原総一朗の遺言:変化を恐れず、自分の価値観を疑え

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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