――日本市場に進出することで得られる御社のメリットとは何でしょうか。

同社の調理家電ブランド「Ninja」(ニンジャ)が展開する、フードプロセッサー(写真:左上)、コーヒーメーカー(写真:左下)、「Shark」(シャーク)が展開するスティック型掃除機(写真:右)

アメリカの掃除機市場は約2000万台。比べて、日本は800万台と40%ほどです。

一見するとあまり大きくない市場に思えますが、掃除機にかける平均単価はアメリカの倍。つまり台数は40%でも、金額ベースの市場規模は約80%にもなります。いいモノには掃除機でもお金を惜しまない、綺麗好きな国民性がうかがえます。

また、日本進出は、数字だけではない大きなメリットがあります。日本の消費者は品質に対して非常に細かくて厳しい。例えば北米向けの商品ですと製造ラインも割とのんびりとしたものですが、日本向けの品質管理はそうはいかない。製品に指紋がひとつ残っていたらアウトです。ですから、日本市場に進出するということは製造ラインの品質管理レベルが上がるということになります。結果、日本の消費者が満足できる製品を作ると、どんな国でも満足していただけるという副次的効果もあります。

これはメーカーにとって非常によいこと。だから私は日本の消費者が大好きなのです。

 

――ゴードン社長は20年の日本在住経験があり、日本市場のノウハウにも精通しているとお聞きしました。これまでの経歴をお聞かせください。

初めは英国外務省の外交官として、駐日英国大使館で勤務したのが日本との関わりのスタートです。その際に、私はビジネスでも政治でも日英関係がこれからいっそう重要なものになると考えていたので、率先して日本語を勉強しました。その後は、ダイソンに入社し、98年のダイソン日本法人の設立に合わせて初代社長に就任しました。06年からはダイソン・アメリカの社長を務めました。その後、ダイソンを離れ、自分のコンサルタント会社を設立したのですが、その時のクライアントのひとつがスウェーデンの家電メーカーのエレクトロラックスでして、同社の日本進出に合わせて再び日本に来ることになりました。

そして、16年にシャークニンジャの日本進出サポートの依頼を受けます。日本市場の現状説明や事業計画の打ち合わせを重ねるうちに、日本法人の社長をやってほしいと頼まれました。17年の8月から今回で5度目の長期日本滞在中です。コンサルタントとして月に8日分の仕事しかしなかった生活から、週に8日分の仕事をすることになってしまって、忙しく駆けずり回っています(笑)。