居酒屋の人気メニュー「鯖寿司」に全力投球
【田原】右田さんはいま、さば料理専門店「SABAR」を展開している。居酒屋から業態転換したんですか。
【右田】まずその前に鯖寿司の販売を始めました。オーストラリアで工場長をやっていたとき、社長から「オーストラリア人はしめ鯖を食べない。こちらの人が食べられる鯖を開発しろ」と指令が出て、研究したことがあったんです。そのときの知識を使って店で鯖寿司を出したら、妻が「あなたの料理で一番おいしい」とほめてくれた。
【田原】普通の鯖寿司とどう違う?
【右田】一般的な鯖寿司は押し寿司で角ばっていますが、うちのは丸くて炙ってある。また、臭みを消すためにご飯の中にショウガとゴマを入れています。これが好評だったので、昼間に鯖寿司のデリバリーを始めました。
【田原】売れたの?
【右田】配達のバイクを「サバイク」と名づけて鯖仕様にしたら、関西の人気ローカル番組に取り上げられまして。それで注目を集めるようになって、1年後には居酒屋を人に任せ、自分は鯖に集中するようになりました。そのころにはスーパーでの催事販売を始めて、その翌年の2008年には百貨店に常設店をオープン。09年には2店舗増えて、計3店舗になりました。
【田原】鯖との出合いはわかりました。その後、どうして鯖専門の料理店に転換したの?
【右田】鯖寿司はそこそこ売れたものの、物販だけでは限界があるとも感じました。ブレークするには、もっと世界観をつくっていかないといけない。
【田原】どういうこと?
【右田】鯖寿司の老舗は、もう古いというだけで世界観があります。でも僕らは中途半端。そこで飲食店のほうは徹底的に鯖にこだわりました。メニューは38(サバ)種類で、席数も38、オープンが11時38分です。
【田原】資金はクラウドファンディングで集めたそうですね。
【右田】1店舗目は金融機関がお金を貸してくれなかったので、1788万円全額を集めました。当時はまだクラウドファンディングが珍しく、そこに鯖専門店という斬新さも加わったことで、マスコミにもドーンと取り上げていただけました。おかげで4カ月で資金は集まりました。
【田原】クラウドファンディングは、どんな利点がありますか?
【右田】大きいのはマーケティングです。鯖専門店は、それまではまったくない業態。それが本当にマーケットに受け入れられるのか、大企業なら事前にリサーチできるかもしれませんが、中小では無理です。しかし、クラウドファンディングで資金が集まるなら、一定の関心があることはわかる。また、開店前からファンができることも大きい。私たちが利用した仕組みは出資者に配当を出すので、出資してくれた方はおのずと僕らを応援して店に人を連れてきてくれたりします。
【田原】実際、専門店は大当たりした。いま何店舗ですか。
【右田】18年11月の時点で19店舗です。香港にも1店舗あります。社員は現在約50人です。