(3)顧客の問題を解決する権限を社員に与える

問題に気づいたらそれに対処する真の権限が自分にはあると感じていて、しかも行動するために必要なツールを与えられているならば、社員は顧客重視を自分の通常業務の分かちがたい一部とする可能性が高い。そのような社員は満足度が高く生産性も高い貴重な人材になる。

サッサーらのいう「サービス・プロフィット・チェーン」、つまり社員の満足を会社の収益性と成長に結びつける連鎖とは、これを指すのである。社員は顧客のために問題を解決する権限を持っているとき最も充実感を感じるということが、サッサーらの調査で明らかになっている。

(4)顧客重視の行動に褒賞を与える

マネジャーは、会社のイントラネットから社内報や対話型集会まで、あらゆる手段を使って社員の顧客重視の行動を広く知らしめる必要がある。また、ボーナスその他のインセンティブを顧客満足度の測定値に直接連動させることも必要だ。

全米に300近い支店を持つセントルイスのオンライン証券会社、スコットトレードでは、すべての社員に四半期ボーナスの受給資格があるが、その20%は、顧客に対するサービスの提供という面での評価に基づいている。たとえば、バックオフィス業務を担当している社員については、上司が彼らの社内顧客、つまり各支店長に問い合わせて、彼らがその社員のサービスにどの程度満足しているかを調べている。こうした努力のおかげで、スコットトレードは消費者市場調査会社、J・D・パワー・アンド・アソシエーツから、過去7年で6回、投資家満足度の最も高いオンライン証券会社に選ばれた。

顧客重視の行動に対して、上司が直ちに褒賞を与えることも大切である。

(5)オープンなコミュニケーションチャネルを築く

顧客のニーズや問題に気づかなければ、マネジャーはそれに対処するための変革を行えないのだから、現場の社員には、顧客の知見をキャッチし、伝えるための利用しやすいプロセスを与えなければならない。そのようなプロセスを設けることは、経営幹部が顧客からも顧客と直に接している社員からも隔絶されやすい大企業では、とくに重要だ。

顧客情報やベストプラクティスを同僚同士が共有できるようにするプロセスを築くことも忘れてはならない。こうした共有は組織のどのレベルでも可能である。コロンビア大学のマグレイスによれば、ディズニーワールドのホテル清掃員は、ゲストに喜ばれた行為を共有するために、毎週ミーティングを開いている。

顧客重視を現実にするためには、いくつもの分野での協調行動が必要だ。顧客重視が現実になったら、顧客の満足度とロイヤルティが向上するだけでなく、社員の満足度とロイヤルティも向上する公算が高いのである。

(翻訳=ディプロマット)