つくって届けると、人生最高の親孝行ができる
こうした子供の手料理が届けば、食事が楽しくなる。食欲が増すうえに、親子のコミュニケーションも密になるはずだ。林さんも「届けた料理が会話のきっかけになる」という。
「ウチの母でいえば、料理を送ると電話がかかってきて『おいしかった』とか、『どうやってつくったの?』とか、『ちょっと味が濃かった』とか、関西の人だからもう話が止まりません(笑)。もし『硬くて食べにくかった』と言われたら、噛む力が弱っているのかもしれない。そうやって親の気力や体力の変化にも気付けるのも“親つく”のメリットですね」
この本をきっかけに、“つくって届ける”を始めた人もいる。東京在住のNさん(50代女性)の場合、両親は関西で2人暮らし。90歳の父は昭和一ケタ生まれ世代らしく家事には一切手を貸さず、80歳の母親がすべてをこなしているそうだ。Nさんは言う。
「料理を送ろうと思ったのは、母への心配からですね。父は和食一辺倒で、食べ慣れたものしか口にしません。そんな父に遠慮して、母も好物のラーメンなどはなかなか目の前では食べにくいそうです。しかも、母は脊柱管狭窄症の手術をして以来、自分用の料理を別につくるほど体力もない。唐揚げを食べたくなって、こっそりコンビニで買った、と聞いて切なくなりました」
そんな母のために、本のレシピにあった煮込みハンバーグやさつまいものレモン煮などをつくって送ったところ、食に保守的な父親がさつまいものレモン煮に箸をのばしたそうだ。
「私がつくった料理ということで、食べてくれたのかもしれません。味も気に入ったようで、『お父さんがおいしい、おいしいと食べていた』と母が嬉しそうに報告してくれました。なによりも良かったと思うのは、夫婦の会話が増えたこと。普段は黙々と2人で食べているそうですが、私がつくった料理を前にすると、『こんなんがつくれるんやな』『ようできてるな』と話が弾むそうなんです。そう聞くと、また送ってあげたくなりますよね」
「親つく」で節約と健康管理と親孝行が同時にできる
Nさんの話を聞くうちに、私も両親につくりおきを届けてみたくなった。何か心構えはあるのだろうか。林さんは「大切なのは、無理をせず、自分のペースで送ることです」と話す。
「わざわざ親のためにつくるのでなく、自分用につくりおきするついで親の分を取り分ける。『おいしくできたからちょっと食べてみて』くらいの感覚だと親にとっても負担にならず、長続きしますよ」
レシピには電子レンジで加熱するだけの手軽な料理も多数紹介されている。親に送るだけでなく、自分用のつくりおきもできれば、外食や中食の食費が浮いて体にもいい。節約と健康管理と親孝行が同時にできるのだから一石三鳥だ。ぜひチャレンジしてみてほしい。