部下と機械に仕事を振れ

実は私もアマゾンに入社してから同じ経験をしたことがあります。あれもこれもやらなければと思えば思うほど焦り、自分が何とかしなくてはと追い込んでしまったのです。まさに「抱え込み」の典型例です。このときは、上司がサポートしてくれたことで、抱え込んでいた仕事を分散することができました。

では、委譲する相手は誰か? 答えは2つあります。

【(1)部下】→ 委譲するとともに成長機会にする

今の仕事はどんどん任せて、自分自身はより経営に近い仕事を担ったほうがいいでしょう。そのスムーズなバトンパスが、会社の成長を生み出します。また、権限委譲は、部下に成長の機会を与えることでもあります。

部下に権限を委譲することは、決して難しいことではありません。まず一番大切なのは、本人に「あなたに権限を委譲します」と伝え、関係者たちにも「権限を委譲した」と伝え、自分も相手も周りも「委譲」を意識させることです。

このとき「囲い込み」や「抱え込み」の感覚が強い上司が犯しがちな失敗は、「全部やっておいて」と言いながら、権限は自分が持ったままで手放さないことです。「全部やらなければいけないのに、いちいち上司にお伺いを立てなければいけない」という状況が、いかに仕事に対するモチベーションを下げるか、逆の立場で考えてみましょう。

権限を委譲したら、後は任せる。部下の成長具合によっては「定期な進捗報告はお願いしたい」「困ったことがあればどんどん聞いてほしい」といった形で、最低限のルールを決めつつ、あくまでもサポートに徹するのがベストです。ただし、目標や方向性と照らし合わせて間違いが生じている場合は、「当初の意図している方向とは違う方向に進んでいる」ことを言葉できちんと伝え、話し合いの中で修正を行うのです。

部下への権限委譲は、上司にとってはその時間を使ってさらに高次の仕事ができ、部下はより大きな仕事の充実感を味わえ、お互いが成長できてハッピーをもたらすものなのです。