世界最大の物流ネットワークをもつ巨大企業なのに、圧倒的なスピード感で次々と新規事業を立ち上げ、成功させていくアマゾン。どうしてあの速さで、組織としての決断を下し、ビジョンや計画を実行できるのか。アマゾンジャパン立ち上げから15年間にわたって活躍した佐藤将之氏が、同社の驚くほどシンプルな組織構成と情報共有の方法を解説する――。
アマゾンのスピードを支える「組織階層の少なさ」
アマゾンは他の大企業に比べ、組織階層は驚くほど少なく構成されています。これはアマゾン内での「決断」と「行動」のスピードを高める、非常に大きな要素です。
私は、アマゾンジャパンのオペレーション部門のディレクターという肩書きを拝命していました。その上にはVP(ヴァイス・プレジデント/世界各国のアマゾンの社長にあたる)、その上にSVP(シニア・ヴァイス・プレジデント/各部門の最高決裁者でシアトルにいる)、そしてCEOのジェフ・ベゾスがいるだけです。
ちなみに旧来の日本企業の場合、社長がいて、副社長がいて、専務がいて、常務がいて、平取締役がいて、理事がいて、事業部長がいて……部長に至るまでに8階層、9階層もあり、場合によっては決裁権が曖昧なままの組織すらあります。
また、アマゾンでは基本的に「上司は、階層が1つ下の部下の人事権を持つ」ということも徹底しています。なぜなら、いちばん近くで見ている上司がその部下をサポートしなければ意味がありません。つまり、上司がその部下を評価するのがきわめて自然な流れととらえているのです。仮に、部長から見て、いくつか階層を隔てた部下がミスを犯したとしても、部長は必ず1つ下の部下に注意します。こうしたことを徹底し、上司と部下の関係性をシンプルにしています。
組織構造に変革を起こしたい方は、「とにかくヒエラルキー(階層)をつくらない」という観点で、組織編成のしかた、情報共有のしかたを見直してほしいと思います。
しかしながら、大企業ほど組織編成を変更するのは簡単ではありません。そんなときに役立つのは、メーリングリストを使った情報共有で、これは、すぐに始められて、効果も表れやすい方法です。