実際、横浜市と川崎市は、小児医療費助成の対象年齢幅が狭く、23区のみならず神奈川県内の他市などにも後れを取る時期が長く続きました。人口では2倍以上の開きがある両市ですが、23区と神奈川県の境と違って川で隔てられているわけではなく、ただの道一本で市境というところも多く、ある意味永遠のライバル都市です。医療費助成の対象年齢を1歳上げるごとに必要な費用は、横浜市の場合8億~9億円とさえいわれていますが、お互いに相手を意識し合って、近年は図表1で示したように、ほぼ同じタイミングで上限年齢を上げるべく張り合わざるを得ない状態になってきました。

“小児医療費タダ”の不都合な真実

さて、前置きが長くなってしまいましたが、こうした小児医療費助成制度、要するに子どもの医療費がタダになるしくみは一見するといいことずくめですので、なるべく対象年齢幅が広いまちに住んだほうがお得であるかのように思えます。

しかし実はここにも不都合な真実があるのです。そもそも、子どもの医療費というのは、平均で1年間にどれくらいかかるかご存じでしょうか。厚生労働省の統計に基づき分析すると、年齢階級別で1年間にかかる医療費(公的医療保険制度で補てんされる分も含めた合計)や、特別な医療費助成がないものとしたときの2~3割自己負担の額(年額、1か月当たり)は図表2の通りです。