細分化された独自の業績指標で目標管理
金融業界の経験があるベゾスが立ち上げた会社らしく、数字に徹底的にこだわる社風でも知られる。アマゾンはKPI(Key Performance Indicator=重要業績指標)至上主義とも言われる。月、週、日などの期間を決めて、業務内容によって細かく設定された目標を達成したかどうかをチェックしていくのだ。たとえば小売業ならば、来店客数や客単価などの目標を定めていく。しかし、アマゾンのKPIはもっと極端に細分化して管理しているという。
システムの稼働状況はもちろん、顧客からアクセス数、コンバージョンレート、新規顧客率、マーケットプレイス比率、不良資産率、在庫欠品率、配送ミスや不良品率、1単位の出荷にかかった時間などに細分化されている。それぞれの管理担当者に、地域ごと、倉庫ごと、システムごとに割り当てられているという。
このKPIの数値をもとにアマゾンでは毎週地域単位、グローバル単位で会議が開かれる。その会議では具体的な向上策のみを話すと言われている。各KPIには責任者がいて人事考課などにも大きく影響する。恐ろしいのは、このKPIの目標管理を0.01%単位(通常は0.1%単位)でしていることだ。なぜ目標を達成でき、あるいはできていないかを考え、日々の取り組みの改善につなげる。
これも、とりあえずベータ版を作り、実際に動かしてみて、改善点を見つけ出して、プログラムを修正するというプログラマーの手法と一緒だ。そのうえで、すべてのいいところを合体させて最終製品にするのだ。プログラマー出身のベゾスの面目躍如の経営手法だ。
もうダメというところまで働かされる
ベゾスはアップルの故スティーブ・ジョブズやフェイスブックの創業者のマーク・ザッカーバーグ、テスラ・モーターズ最高経営責任者のイーロン・マスクなどに比べると、日本では馴染みがないかもしれない。果たしてどのような人物なのか。『ジェフ・ベゾス 果てしなき野望』(日経BP社)を読むと、彼の一面をうかがい知ることができる。
部下には長時間労働や、週末の休みを返上して働くのを強いるのは当たり前。有能でなければズタボロに捨てられ、有能な人物ならもうダメというところまで働かされる。日本のブラック企業が生ぬるく見える過酷さだ。ちなみに、求める人材は「どのような課題を与えられても、さっと動いて大きなことをやり遂げられる人物」とか。そのような有能な人物は自ら起業してしまうのではないかと思ってしまうが。