当然のことながら、AI(人工知能)などテクノロジーへの感性も理系の方がある。たとえば、理系には実験がつきものだ。実験したら失敗することがあることを、経験的に知っている。アマゾンは、よくベータ版を作ってテストをする。これは、まさにプログラミングの原理と一緒だ。コンピューターのプログラムは、とりあえずサブシステムという各部品のベータ版を作る。これと同じく、アマゾンは、あらゆるジャンルで中途半端でいいから出し、Plan Do Seeをよくしているといえる。計画、実行、評価を繰り返す企業である。

企画会議では「プレスリリース」を準備

たとえば、ベゾスとアップルのスティーブ・ジョブズとの違いは、そのまま会社のカラーに当てはまる。ベゾスはエンジニアなので、ものごとの構造や作り方を知っている。アマゾンの経営にも、ネットを使ったテクノロジー会社を作りたいという気持ちが表れている。

ジョブズは夢追い人であり、デザイナーだ。アップルも言ってしまえば「かっこいい」から始めた。そんなアップルは、GAFA(編集部注:「ガーファ」。アメリカのIT大手、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社をさす)の中でもハードウェアを作る能力が最も高い。

ベゾスは、理念の追求に本当に貪欲だ。「全ては顧客のために」を御旗(みはた)に、無駄を徹底的に省く。幹部でも飛行機のビジネスクラスは禁止。とはいえ、働きに対する報酬はケチることはなく、日本では30代後半から40代後半の部長職ならば、年収は2000万円前後だという。

また、企画会議では、6ページにまとめられたプレスリリースを模した資料を用意するらしい。それを、出席者が最初の20分をかけて読むことから始まる。パワーポイントなどスライドは使わない。これは、最初からプレスリリースの形にすることで、プロジェクトの完成形を作り上げ、さらに顧客目線を意識させる狙いらしいが、会議の冒頭で、出席者が資料を読むために20分間の沈黙を続けるというのはなかなか聞いたことがない。