また、1983年の新聞記事には、ある大手企業が全国の営業所に通達していた、女性社員採用基準の文書が掲載されています。そこには「採用不可の女子として(1)ブス、絶対に避けること(2)チビ、身長140センチ以下は全く不可(3)カッペ、田舎っぺ(4)メガネ」と明確に記されていました。
これはすぐさま社会問題となり、当時の国会でも議論されたほどでした。しかし、このような容姿重視の採用が、少なくとも30年前には存在していたことは事実です。企業の人事採用担当者が、ほぼ全員男性だったことも一因でしょう。こういう採用がまかり通っていたころは、確かに「美人は仕事でも得をする」といえたかもしれません。
着実に増えつつある女性管理職
しかし、時代は大きく変わってきています。なぜそう言えるのかというと、管理職になる女性社員が年々増加しているからです。
2003年、男女共同参画推進本部において、『2020年までに女性管理職の割合を30%まで引き上げる』という目標が示されました。実際、管理職になる女性社員は年々増加し、例えば係長クラスの女性は、平成元年(1989年)には全体の4.6%でしたが、平成27年(2015年)には17%にまでなっています。
しかし、目標の30%にはまだ足りません。そこで、国は女性の活躍をアベノミクスの成長戦略のひとつとして位置づけ、2016年に「女性活躍推進法」(正式名称「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)を制定しました。
この法律の基本原則には、「男女の職業生活と家庭生活の円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として」とあります。女性がより活躍するには、採用機会の拡大、管理職への昇進などがもちろん必要ですが、バリバリのキャリアウーマンばかりを養成することがこの法律の狙いではありません。むしろ、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を見直し、女性の意志が尊重される働き方ができるような社会的環境を整えることを目的としています。
従業員301人以上の企業では「女性活躍推進法」に対応する計画を実施し、公表することが義務づけられました。このような企業ぐるみの努力で、女性管理職の割合は将来的にもこのまま上がり続ける可能性が高いでしょう。