メディカル分野への展開も

7月10日の上場後、MTGの松下剛社長は「ブランドをつくり続ける仕組みが整った」との見解を示した。これを深堀りして考えると、MTGは、ブランド開発企業としての基盤を土台にして、美容と健康をトータルにサポートする企業への飛躍を目指しているように見える。

今後、MTGはヒット商品の創造を目指し、トレーニング以外の分野でも新しい取り組みを進めるだろう。注目されるのが、メディカル分野だ。MTGは医療機器の開発や医薬品の販売事業を準備している。詳細は明らかになっていないが、医療関連のテクノロジーを用いた新しいヒット商品の開発、それを用いたトレーニング理論の構築と実践、およびサプリメントや医薬品の開発などが考えられる。

こうした取り組みが進むことは、MTGが、より良い美容と健康を手に入れたいと思う人々の願いの実現に、体の外と内の両面から貢献することと言い換えられる。そのほかにも、ファッションやライフスタイルなどへの展開もあるだろう。

潜在的な可能性を秘めた企業

こう考えると、MTGは潜在的な可能性を秘めた企業だといえる。同社に期待したいのは、新しい発想をもとにして、人々が欲しいと思ってしまうようなモノやサービスを連続的に生み出していくことだ。

同社の経営に、さまざまな分野での最新理論の実用化を目指す人物が参画していくと、よりダイナミックな展開が期待できる。シュンペーターの言う新結合(イノベーション)は、さまざまな試みや、新しい発想が融合することで生み出される。時には、失敗と思われた取り組みから、思わぬ成功が生み出されることもある。

言い換えれば、専門家と企業家が、自由な発想をぶつけ合い、より良いモノ、ヒット商品を生み出そうとすることが大切だ。そうした発想のもとで、海外ビジネスからの収益がもたらされれば、同社の持続的な成長への期待は高まるだろう。

MTGが、新しい発想を実用化しようとする個人のアニマルスピリット(成功などを追求する血気)がほとばしる企業になることを期待したい。そうした考えが増えれば、起業家も増え、ユニコーン企業の育成も進むだろう。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
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