大阪桐蔭、履正社、智辯和歌山、敦賀気比……全国の野球名門校に進む多くの有能な中学生人材が集まる大阪のトレーニングジムが注目されている。所属するパーソナルトレーナーが指導する対象は、部活終了後の3年生を中心とした中学生。金の卵を育てるメソッドとは。フリーランスライターの清水岳志さんが、今年3月にジムに密着した――。

高校野球の強豪校に進む中学生が通うトレーニングジム

大阪・京橋駅――JR西日本や私鉄が乗り入れるターミナル駅の高架下、以前は美容室だったというスペースにガラス張りでコンクリートうちっぱなしのトレーニングジム「Athleet Works(以下アスリートワークス)」はある。

2020年に1店目をオープンし、昨年11月にここに移転。堺市と2店を構えるジムの代表が徳丸博之(52歳)さんだ。

撮影=清水岳志
   

本業は、ネット通販系の会社の経営者だ。父親から引き継いだ仕事の業態を変え、社員約50人を抱えている。なぜ、畑違いのジムの経営を始めることになったのか。

それは、自分自身がずっとケガと格闘していたことと関連がある。

小さい頃から野球好き。大阪・明星高校→関西大学→三和銀行(現三菱UFJ銀行)と進む中、30歳まで現役選手としてプレーした。だが、その間、体は故障続き。投手をやっていた高1時は連日、200~300球の投球練習をしたことがあだとなり肩を壊した。野手に転向してからも、先輩とバーベルを何キロ上げられるか競争したら、脊椎分離症になってそのまま入院。最終学年の3年時はひざを痛めた。大学で野球をやるために治療に専念した。

「根性だけは負けなかったんでやり通せたんですが(苦笑)。あのとき、今のトレーニングのノウハウをもってすれば、すべて回避できたと思うんですよ」

懸命に練習に取り組んだのはよかったが、その方法には後悔がある。自分の人生はもっと違うものになっていたかもしれない。そんな思いがある。それと、もうひとつ。社会人野球のあとに経営者として仕事をしてきた中で健康な体の大切さを悟った。

「経営者というのは社員とその家族の生活を背負っています。だから、体を壊しちゃいけない。それで、経営者仲間がトレーニングをしていて、自分も指導を受けてみようと。そこで、トレーニングは子供のうちからやることが重要だと気づかせてもらった」