熱いトレーナーの献身と浪速のおっちゃんのおせっかい

取材した日、大阪桐蔭に進学することを決めていた徳丸さんの次男・中3の快晴さんが最後のセッション(トレーニング)を行っていた。屋外でのランニング後はウェートトレーニングだ。担当トレーナーCさんは医療学校の講師、中学高校のバレーボール部、整形外科での治療サポートにも関わっている。快晴さんの成果を聞いた。

「(中学の部活が終了した)半年前、大阪城の公園で足を速くするスプリント系のトレーニングから取り組み始めました。次に高校で必要なフィジカルを高めていくトレーニングをして逞しい体つきにはなったかなと。股関節の動かし方が良くなった。ここでやったことがプレーの面でどれだけ生かされるか見てみたい。ここから楽しみです」

トレーニングの様子
撮影=清水岳志
トレーニングの様子

取材した日の2日後に快晴さんは丸刈りにして野球部の寮に入るのだという。快晴さんはトレーニング中、つらくて何回もうめき声をあげていたが、「半年以上やって、体重が77キロから83キロになりました。太ももも太くなったし、ベンチプレスもスクワットもかなり数字が伸びました」と満足気だ。

大阪桐蔭の1年生同期は23人おり、全員がライバルだ。

「西谷(浩一)監督には力強いスイングで長打力をアピールしたい。同期には負けないぞ、という気持ちを大事にしたい」(快晴さん)

将来のプロ入りの可能性も十分にある天晴さんと快晴さん。2人の“金の卵”を大事に大事に育ててきた野球人の先輩である父親は「野球を嫌いになって欲しくなかったので、とにかく褒めた」という。

息子たちの今後の成長は遠くから見守ることになるが、新しい教え子が毎年やってくる。本業の傍らのジム経営はそう甘くはないが、最近も、甲子園出場経験のある高校とも契約を結んだばかりで、無理のない範囲で業務を拡大する方針だ。

「中学生や高校生、彼ら成長株を下支えするのが、私の務め。だから、引退はないです。昔は世の中、自営業者が多かった。取引先のおっちゃんとか、近所のおっちゃんとか、よう知らん人からも『がんばれ』って一言かけられて、それが励みになったり嬉しかったり。大阪の人はたいていおせっかいなんですが、そんな人が世の中、よくするんちゃうかなと思ってるんで」(徳丸さん)

チャレンジ精神旺盛な経営者の原点は、浪花のおっちゃん、なのだ。中3の卒業式を終え、帰路につく子たち。ジムのある高架下には、彼らを見送る徳丸さんの“愛あるおせっかい”が響いていた。

「いろんな事があるかもしらんけど、なんでもええから、言うてきいや。つらいことがあっても、(大事なのは)継続やで。遠距離になるけど、連絡してきいや」

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