40歳の創業者が、70歳のプロ経営者を招く理由

“結果にコミットする”のフレーズで知られる、ライザップの経営陣刷新が注目を集めている。同社によれば、成長への“コミット”のための経営強化だという。このコミット(コミットメント)が同社の経営を考えるキーワードだ。そこには、“必ず成果を出す”という意思が込められている。

成長へのコミットメントを果たすために同社は、カルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)を務めた松本晃氏(70)を代表取締役最高執行責任者(COO)に招いた。創業者である瀬戸健社長は40歳と若い。にもかかわらず、親子ほど年の離れたプロ経営者を招くことは、なかなかできるものではない。“経営の師”と言うべき人物を招くことで、瀬戸氏自身が経営者として一層の成長を目指しているともいえる。外部からプロ経営者を招き、社長自身の経営管理能力の向上にコミットしていることも注目を集めている。

一方、懸念もある。買収のリスクは軽視できない。同社は赤字企業など経営の悪化した企業を買収してきた。それが続くと、財務リスクは上昇するだろう。その懸念から、同社の買収戦略を“赤字企業の爆買い”という専門家もいる。一体どのようにリスクを抑え、成長(リターン)を伸ばしていくつもりなのだろうか。

2018年5月28日、RIZAP(ライザップ)の最高執行責任者(COO)への就任を発表する松本晃カルビー会長(右)(写真=時事通信)

ライザップ急成長を支える2つの要因

2018年3月期、ライザップは前期比100%を超える収益の増加を実現した。売上収益は6期続けて増収、営業利益は5期連続で増益だ。背景には、二つの要因がある。

まず、本業の成長がある。同社のトレーニング・プログラムは人々の支持・信頼を獲得している。なぜなら、はっきりと、目に見える成果が出るからだ。「やればできる」という自己実現の喜びを顧客に提供することが、同社の成長の源泉といえる。

もう一つ、会計処理の影響も大きい。2017年3月期から同社が採用したIFRS(国際財務報告基準)では、企業を正味の価額より安く買収できる場合、“割安購入益”が計上される。それが利益を押し上げた。例えば、純資産価額が10億円の企業があるとする。この企業を3億円で買収した場合、買収企業には7億円の割安購入益が発生する。

現状の収益構造を見ると、フィットネス事業よりも割安購入益のほうが大きい。また、割安購入益を除いても過去最高益が達成されている。同社は、買収を通してライフスタイルに関するビジネスを進め、ボディメイク事業とファッションなどの相乗効果を狙っている。本業のビジネスを強化しつつ、リスクを抑えながら買収を実行できるかが同社の成長を左右する。