夫が何食わぬ顔で「妻より愛人」を選んだ理由
実は夫も恵子さんと離婚し、愛人と再婚したいわけではありません。夫の母はすでに亡くなっており、自宅には夫の父(79歳)も同居しています。恵子さんが、その義父の部屋の掃除、衣服の洗濯、そして義父を含めた3人分の食事を用意しています。
義父は高齢のため、すでに生活の一部に介助が必要で、今後は要介護状態になる可能性が高いです。恵子さんは「夫は義父の世話を自分に押し付けるに決まっています」と話します。つまり、夫は恵子さんに出て行かれると困るのです。
そこで夫はずるい発想をしました。
もし、妻を選んだ場合は、愛人を失います。しかし、愛人を選んだ場合は、妻を失うことなく、二股を維持できる。夫が出した結論は、当然のことながら後者でした。これは、恵子さんが自ら離婚に踏み切れないと読んだうえでの判断でしょう。
夫は何食わぬ顔で「妻より愛人」を選びました。その後は、恵子さんがいくら愛人のことで詰め寄っても、夫は「誰に食べさせてもらっているか分かっているのか? 余計なことを言うな!」などと暴言をはいて、恵子さんをののしったといいます。
▼“同居”する愛人に300万円の慰謝料を請求すると
怒り心頭に発した恵子さんは勝負に出ました。
弁護士に依頼し、女性の住所へ慰謝料の請求書を送り付けたのです。すると、驚くことに1週間もたたないうちに請求額(300万円)が恵子さんの口座に振り込まれたのです。恵子さんはあっさりと慰謝料が入金されたことに違和感を持ちつつも、大金を払わせたことで女性が深く反省し、心から後悔し、言動を改めるのではないかと期待しました。
ところが事態はまったく逆でした。女性はそれからも平然とした顔で出勤し、相変わらず「社長の奥さん」のように振る舞い、外で恋人のように夫と手をつないでいました。実際のところ、慰謝料を用立てたのは女性ではなく夫だったのです。
慰謝料請求書が届いたとき、女性は夫に泣きついたのでしょう。「これ、どういうこと?」と。夫は女性に逃げられたくない一心で、慌てて慰謝料を立て替えたに違いありません。結局、振り込みの名義は女性の名前なのに、慰謝料の出どころは夫婦の財産なので、家庭内でお金が移動しただけです。
これでは夫が「300万円やるから我慢しろ!」と言っているようなもので、慰謝料は不倫の「公認料」ともいえます。そのせいで恵子さんは2人の関係に口出ししにくくなりました。慰謝料の請求は完全に裏目に出てしまったのです。最近では恵子さんが話しかけても夫は逃げ回るばかりで、日常会話すら成り立たないといいます。