自営業で財産もない夫と別れてもメリットがない

こうして恵子さんは家庭にも仕事にも自分の居場所はなく、生き地獄のような毎日を送っていました。もし義父が生活の介助をしてくれる嫁(恵子さん)の味方に付き、不肖の息子を厳しく叱ってくれたら、今後も献身的に介護する気になったかもしれません。しかし実際には「まぁ男なんてそんなもんだ」と馬鹿息子の肩を持つばかり。恵子さんは息子そっくりの義父の世話をするのは苦痛でしかありませんでした。

しかも、さらに恵子さんが冷遇されることになるのです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/DragonImages)

恵子さんは経理の仕事をするため事務所に出入りしていましたが、突然、夫が「出入りするな」と言い出したのです。恵子さんは事務所から締め出され、20年以上も続けた仕事を失ったのです。

そこで少しでも気を休めたいと、恵子さんは自宅兼事務所の近くに「隠れ家」を借りたのです。女性から取り立てた慰謝料300万円の一部を敷金や礼金に充て、毎月20万円の専従者給与から家賃を払いました。恵子さんは夫に内緒で安息の空間を手に入れたのです。

▼残る財産は自宅兼事務所のみ「愛人と決着をつける日」

いっそのこと隠れ家へ完全に引っ越して、不倫の現場である事務所からは距離を置きたいというのが恵子さんの願いでした。しかし、夫と正式に離婚し、すべてを捨てて自由の身になれればいいのですが、残念ながら、夫は自営業なので老後支給されるのは国民年金のみで、厚生年金のように年金分割することができません。また、ちゃんとした株式会社ではないので、定年をむかえても退職金が出る見込みは薄い。そうなると財産分与の受けられるまとまった資産は、住宅ローンを完済した自宅兼事務所のみということになります。

少なくとも離婚による金銭的なメリットはないので、恵子さんのほうから別れを切り出すのは損です。とりあえず夫が元気で働き、安定収入を得ている間は、義父の介護を最低限こなしながら専従者給与をもらい、隠れ家で暮らそう――。恵子さんはそう考えています。

夫は介護放棄、愛人は不倫継続、そして恵子さんは生活保障。三者三様の“利害”が奇妙に一致しているわけですが、夫がリタイアしたときや他界したときは、どうなるか。恵子さんは愛人と決着をつけることになる気がします。(以上、ケース2。ケース3へ続く)

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