そして、品ぞろえの「数」では、リアル店舗である以上、ネット通販に勝てない。前述の通り、化粧品・トイレタリーカテゴリーは嗜好の幅が広く、スペースが有限なリアル店舗ですべてに対応するのは不可能だ。ネット通販が自社物流網を敷くなどして輸送費コスト問題を解決すれば、ドラッグストアの主力カテゴリーはそちらに奪われるだろう。

「買い物の楽しさ」を取り戻す試行錯誤が続く

ドラッグストア各社も自社通販サイトを設けているが、物流網を含めたシステムで専業企業にはかなわない。福井県や愛知県を中心に「ドラッグストア ゲンキー」チェーンを展開するゲンキー社では、今年3月、「大手ネット通販に価格も利便性も太刀打ちできない」として、自社通販サイトを含めたネット事業からの撤退を発表した。

こうした中にあって、マツキヨラボの「実際に試せる」という売りは、店舗ならではの優位性を活かしたやり方だ。ネット通販はお試しができず、プロである店員からのおすすめや後押しもないため、結局は価格競争にならざるを得ない。また、自分の目的の物のみを探す検索や、好みの傾向に沿ったリコメンド機能による買い物になるため、新たな商品に出会う楽しみは生まれづらい。

リアル店舗が買い物の楽しさをネットから取り戻す試行錯誤は、まだまだ続いていきそうだ。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト・コンビニ評論家
1967年、静岡県生まれ。東洋大学法学部卒業。ローソンに22年間勤務し、店長やバイヤーを経験。現在はTBCグループで商品営業開発に携わりながら、流通分野の専門家として活動している。『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ)レギュラーほか、ニュース番組・ワイドショー・新聞・週刊誌などのコメント、コンサルティング・講演などで幅広く活動中。
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