経済産業省の2017年「商業動態統計」によれば、業界全体の販売額は3年連続で増加し、5.4%増の6兆580億円となった。成長はいまだに続いているというわけだ。こうした数字を見ると、平成が終わろうとする現在もドラッグストア業界は安泰のように思える。だが、足元は決して安定していない。

ドラッグストアが抱える問題として、まっさきに挙げられるのは売場の同質化だ。品ぞろえはどこも似たり寄ったりで、店頭の看板を隠し、販促物やPOPなどを外せば、どのチェーンの売り場なのか消費者には見分けがつかないだろう。ほとんどのチェーンが、商品棚の構成を決める際に同じ「棚割ソフト」を利用し、同じような在庫管理の手法を用いて売り場を構築している。提案するメーカーも変わらないため、同質化するのは自明の理である。

「返品可」ルールが緊張感なき売り場を作る

売り場が同質化する理由は、ほかにもある。ひとつは、ドラッグストア特有の商習慣だ。ドラッグストアは当然、その成り立ちに薬局がある。医薬品の店頭商品は、「返品可」が基本ルールだ。この慣習に基づいてドラッグストアでは、コンビニやスーパーでは返品できない商品もメーカーへの返品が可能になっている。返品を前提とした売り場づくりでは、バイヤーは「売れなかったら返品したらいい」という発想になりがちだ。リスクに対する緊迫感に欠け、ますます同質化が進んでしまう。

もうひとつは、独自の商品開発が難しいことだ。ドラッグストア業界でナンバーワンの店舗数を誇るのはツルハホールディングスで、2019年5月中に2000店舗に到達する予定だが、これはコンビニ業界と比べるととても少ない。業界3位のローソンでも、1万4159店(2018年4月現在)あるのだ。数の優位性があるコンビニは、OEMメーカーやナショナルブランドメーカーの生産ロット数に対応できるため、独自商品を開発する環境が整っている。一方ドラッグストアは、チェーン限定のNPB(ナショナル・プライベートブランド)商品やWチョップ商品(メーカーと小売店ブランドを並列表示した商品)などをメーカーと共同開発できないため、商品としての独自性を出すことが難しい。