今もその流れは変わらず、ロベルト・ソルダード、アルバロ・ネグレド、モラタ、ロドリゴ、ヘセ・ロドリゲス、マリアーノ・ディアスらが欧州の有力クラブで得点を重ねている。フランスリーグで得点王を争うマリアーノを除き(ドミニカ代表)全員がスペイン代表に選ばれ、ブランド力の高さを示している。マドリー育ちのFWは、どのクラブでもゴールを奪うたくましさがあるのだ。

小宮良之『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)

一方、バルサで育ったFWの多くは苦しんでいる。ラ・マシア史上最高の至宝と言われたボージャン・クルキッチやムニルも、望まれた活躍はできていない。育成環境の特殊性とのギャップを埋められないのだ。

バルサはバルサらしい選手を育てるためには、世界に類を見ない至高の育成環境と言える。多くの選手がトップチームで主力として飛躍。その数はマドリーに勝る。メッシという希代の選手を生み出しただけでも大きな価値があるはずだ。

しかし、完璧な育成はどこにも存在しない。

だからこそ、育成について思案を続ける理由があるのだ。

小宮良之(こみや・よしゆき)
スポーツライター。1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。著書に『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)、『エル・クラシコ』(河出書房)、『おれは最後に笑う』『ラ・リーガ劇場』(東邦出版)などがある。近著は小学校のサッカーチームを題材にした小説『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)。
(写真=iStock.com)
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