他チームで輝けないバルサ出身選手たち
ラ・マシアには各年代にチームはあるが、各年代でFCバルセロナに定着できるのはひとりいたら御の字。当然、9割以上が他のチームでプレーする。そして、ここで問題が起きている。
新天地で生き抜けない。適応力に問題があるのだ。
「なぜ長いボールを蹴るんだ!? 頭の上をボールが行きかうなんて! これはサッカーではない」。ラ・マシア出身者の多くは、他のチームでプレーすると、そう嘆いて、サッカーカルチャーの違いに愕然とする。今までパスワークを磨いてきた。それに自信があった。しかし、求められるプレーが違いすぎるのだ。
結果、彼らは実力を出し切れない。
例えば、16歳でイスラエル代表に選ばれ、「メッシ二世」と騒がれた左利きのアタッカー、ガイ・アスリンはトップに定着できていない。イングランドに渡ったあとは、鳴かず飛ばず。現在は2部B(実質3部)のクラブで苦労している。短いパスを使ったコンビネーションの中でドリブルを用い、守備を崩すのに慣れてしまい、長いボールが行きかうカウンタースタイルのチームでは適応できない。バルサ以外のクラブで、要求されるスピードとパワーを満たせないのだ。
メッシと同じ左利きアタッカーだったフラン・メリダも、10代でアーセナル移籍後は思った以上のプレーを見せられず、2部が主戦場になっている。UEFAユースチャンピオンズリーグでベストGKに輝いたオンドア、「エトーの再来」と言われたFWドンゴオなど、2部でプレーする選手は少なくない。トップチームが煌(きら)めきを放つ裏側で、「なぜ、こんなところに?」という選手は意外なほど多いのだ。
レアル下部組織で身につく「タフさ」
日本でも一般的に英才教育の正当性が語られる一方、その型にはまりすぎると、脆(もろ)さのほうが目立ってしまうケースもあるだろう。純粋培養の危うさのようなものだろうか。順応性の問題が出てしまう。
どんな環境、社会でも生きる、という荒々しさやたくましさを育むには、型にはめず、剛直さを鍛える方が正しい場合もある。
「どのチームでも活躍するようなタフな選手を育てる」
その視点に立った育成環境をそろえているのが、スペインの「レアル・マドリード」(以下、マドリー)だ。