トップチームで主力になっている選手は、バルサと比べればはるかに地味だが、その育成力は世界でも突出している。

今年3月の最新のスペイン代表では、24人中、最多の6人(マルコス・アロンソ、ナチョ、ダニエル・カルバハル、ルーカス・バスケス、ロドリゴ、ダニ・パレッホ)がマドリーの下部組織育ちだった。特筆すべきはナチョを除いた5人が、マドリーから出て他のクラブで活躍、もしくは活躍が認められて戻った選手という点だろう。代表招集を見送られた代表常連組、アルバロ・モラタ、ホセ・マリア・カジェホン、マタの3人もそれぞれチェルシー、ナポリ、マンチェスター・ユナイテッドというCLベスト16のトップクラブで活躍している。

他にも、GKだけで錚々たる面子だ。イケル・カシージャス(FCポルト)、アントニオ・アダン(ベティス)、ディエゴ・ロペス(エスパニョール)、フェルナンド・パチェーコ(アラベス)がトップクラブで正GKの座をつかんでいる。すなわち、各年代のGKがトップレベルで生き残っているということだ。

“特殊な才能”か“どこでも通用するたくましさ”か

「男らしさ」

簡潔に言えば、それがマドリーの下部組織に入る条件と聞いたことがある。小手先のうまさではなく、マッチョに戦える力。アスリートとしての戦闘能力に近いだろうか。肉体的な強さ、速さだけでなく、精神的な高潔さや不屈さや執念のようなものだ。

例えばストライカーだったら、足下(あしもと)にボールを収め、反転して一発で仕留められるような力強さが一つの基準になる。あるいは、カウンターでズドンと裏に飛び出し、相手より一歩前に出て、ドカンと強いシュートを打てるか。味方との連係ができなければ落とされるが、個人で打開する力が必要になるだろう。

ストライカーを生み出すポテンシャルは、世界随一と言える。例えばマドリーの伝説の7番ラウール・ゴンサレスの影に隠れ、マドリーでの道を閉ざされたFWには、アルフォンソ、ダニ、トテ、ハビ・ゲレーロ、アガンソ、ミスタ、ルイス・ガルシア、リキなど枚挙にいとまがない。特筆すべきは、争いに敗れた彼らもトップレベルのクラブで活躍し、スペイン代表選手にもなっている点だろう。