非現実的な専守防衛に手足を縛られていたら、どうなるか

北朝鮮が追い込まれて暴発した場合、日本に向かって中距離ミサイルを撃ち込んでくる可能性は十分に考えられる。しかし、日本の防衛システムでは北朝鮮のすべてのミサイルを迎撃できないし、いかなる防衛システムでもミサイルの脅威を完全に取り除くことはできない。

迎撃できないなら、撃たせなくするしかない。たとえば北朝鮮が「東京を火の海にする」などと意思表示してミサイルに燃料を注入するなど攻撃姿勢を示した段階で敵基地攻撃を行う。これならば専守防衛のドクトリンにも適っている。

ところが自衛隊は北朝鮮のミサイルシステムを潰すような攻撃能力を有していないし、日米で共同開発している改良型迎撃ミサイルSM3ブロック2Aは数回の実験に失敗しているし、2021年までは実戦配備できない。つまり、現実的な北朝鮮の脅威に対して日本は何一つ対抗する手立てがないのだ。

すでにロシアが完成しているS400は400キロメートル範囲ならどんなものでも1度に80発までは迎撃できる。そんな米露中北の兵器開発合戦のまっただ中に悠長な“(日米)共同開発に期待する”では、国民の安全は守れない。

憲法改正論議とは関係なく、安倍首相の「日本を取り戻す」的な右寄り発想とはまったく違う文脈で、私は北朝鮮の脅威から国民の生命と財産を守るために、専守防衛を超えた攻撃能力を持つべきだと思う。非現実的な専守防衛に手足を縛られていたら、何もできない。間違いなく日本を狙ってくるとわかったときには、先制攻撃できるようにすべきだ。

為政者は準備だけは進めておくべき

「専守防衛を超えた攻撃力」とは何か。

アメリカの戦力で定義するなら1つは海兵隊だ。海兵隊は陸海空3軍の外側にある第4の軍隊で、特殊任務を主とする。たとえば敵基地の破壊工作や人質の救出工作などが海兵隊のミッションだ。北朝鮮に先制攻撃を仕掛けるとなれば、朝鮮半島にいる5万人の邦人の身の安全を確保して救出しなければならない。そうしたミッションを陸軍や海軍が協力して行うのは難しい。陸海空の戦力を一揃い持っている海兵隊のような部隊が必要になる。

専守防衛を超えた攻撃力の2つ目は航空母艦。航空母艦は必ず攻撃対象の近くまで出張っていく。先制攻撃する戦闘機にとっては海上の航空基地だ。当然、空母は狙われやすいので、これを守る護衛部隊と「空母打撃群」を構成する。日本はまだ空母を持っていないが、海上自衛隊の護衛艦「いずも」を空母化する計画が進んでいる。

巡航ミサイルの攻撃力も捨てがたいが、とりあえず先制攻撃でフィニッシュまで持っていく攻撃力となれば海兵隊と空母打撃群がワンセットだろう。これを国民に大きな負担がかかってでも、持つべきだというのが私の意見である。

北朝鮮のような予測不能かつ無法な隣国に対してはそうした攻撃力を持っていないと国民の不安は取り除けない。金正恩は34歳(推定)。アメリカや中国やロシアによって「除去」されなければ、この先も北朝鮮の独裁者であり続ける。すでに日本全土をミサイルの射程に収めて、核弾頭ミサイルの開発は時間の問題。この脅威に対して丸腰で専守防衛を唱えている現実に国民の多くは不安を感じている。

憲法9条の改正を待って攻撃力を持つのが筋という向きもあるだろう。だが空想的平和主義に未だ毒されている政治社会状況では、安倍政権が憲法改正の発議をしても、国民投票で通る可能性は極めて低い。だから憲法改正論議とは別次元で、為政者は準備だけは進めておくべきなのだ。

(構成=小川 剛 写真=AFLO)
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