これらの国の留学生は、ごく一部の例外を除いて出稼ぎが目的だ。彼らは留学ビザの発給対象にはならないはずの存在でもある。留学ビザは、日本でのアルバイトなしで留学生活を送れる「経費支弁能力」のある外国人に限って発給される。留学希望者はビザ取得の際、銀行預金の残高や親の年収を示す証明書を提出しなければならないのだ。
出稼ぎ目的の“偽装留学生”を黙認
しかしベトナムなどでは、よほどの富裕層でなければ経費支弁能力はない。そこで銀行や行政機関に賄賂を渡し、ビザ取得に必要な金額が記された書類をつくる。数字はデタラメだが、銀行などが“正式に”発行した書類なので、「偽造」とも呼べない。そうしたカラクリをわかって、日本側も留学生として認めている。
それを許しているのが、政府が2020年の達成を目指す「留学生30万人計画」だ。計画達成のため、出稼ぎ目的の“偽装留学生”までも受け入れられる。そして彼らが入国した後は、人手不足の職種で低賃金の労働力として利用する。
コンビニや飲食チェーンでも“偽装留学生”が数多く働いている。ただし、コンビニなどで働ける留学生は、ある程度の日本語能力を身につけた「エリート」だ。さらに“偽装留学生”頼みが著しい職場は、実は私たちが普通に生活していれば目につかない場所にある。(後編につづく)
ジャーナリスト
1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『The Nikkei Weekly』の記者を経て独立。著書に、『松下政経塾とは何か』『長寿大国の虚構―外国人介護士の現場を追う―』(共に新潮社)『年金夫婦の海外移住』(小学館)などがある。