日本人と同じ仕事をしても給与では大きな差がつく

業界を代表してインタビュー(2017年12月25日付『朝日新聞』朝刊)に答えたローソンの竹増貞信社長も、実習生の受け入れは「人手不足対策ではない」と強調したうえで、こう述べている。

「レジ係に限らず、コンビニには商品の発注や店舗の清掃など小売業のノウハウが満載だ」
「コンビニ業務を身につけて自国に帰れば、その国の小売業で活躍できる」

苦しさがにじみ出たコメントである。

写真=iStock.com/Neustockimages

実習制度には、建前を守るための細かな規則がやたらとある。たとえば、実習生は母国で就いていた仕事を日本で「実習」し、帰国後は復職するというものだ。コンビニでの実習を希望する外国人であれば、母国での小売業の経験が必要となる。

だが、実習生の送り出しで中心を占めるベトナムやネパールなどアジア新興国では、日本のように小売業は普及しておらず、実習の有資格者も少ない。結果、コンビニでの実習希望者の多くが、ブローカーに「手数料」を払い、ビザ取得に必要な「前職証明」を偽造することになる。実習制度で認められた他の職種でも、当たり前のように行われていることだ。実習生が帰国後に「その国の小売業で活躍できる」という竹増氏のコメントも、制度の現状を見れば現実離れしている。たとえそうだとわかっていても、本音は言えないのである。

日本での出稼ぎを望む途上国の若者にとっても、実習制度はあまりに制約が多い。最長3年までしか働けず、職場を変わることも許されない。しかも給与は手取りで月10万円程度だ。制度上は「日本人と同等以上」となっているが、実際には最低賃金が適用される。そこから寮費などを引かれると、日本人と同じ仕事をしても給与では大きな差がつく。

他に増加が目立つのが、ネパール、パキスタン、ミャンマー

そのため実習生よりも留学生として来日する外国人が増えている。「週28時間以内」という留学生の就労制限は、仕事をかけ持ちすれば簡単に破れてしまう。ブローカーも「日本に留学すれば月20万~30万円は簡単に稼げる」と宣伝する。実習生とは違い、仕事は自由に選べ、職場も変わることができる。うまくいけば日本で就職し、長期間にわたって働けるかもしれない。そのため留学を装い、出稼ぎ目的で入国してくる外国人が急増している。

留学生の数は17年6月時点で29万1164人を数え、12年末から約11万人も増加した。ベトナム人は7倍以上の約7万人を数える。他に増加が目立つのが、ネパール、パキスタン、ミャンマーといった国の出身者だ。12年以降に増えた留学生のうち、4カ国の出身者だけで8割以上を占める。