松田氏の会社も「サイクルショップ“れべる”」という店を併記し、地域住民の部品修理なども行う。こちらは人材教育も兼ねている。一見、技術を習得すれば対応できそうなパンク修理も、実は奥が深い。その取り組み姿勢で従業員の水準もわかるという。

「車輪のパンクにもいろんな原因がある。それをお客さんに説明して『だからこう修理します』と伝えなければいけません。突然、自転車がパンクしたお客さんは早く直してほしいので、すぐに修理にとりかかる。技術とともにフットワークの軽さも大切です。日々の修理をこなし顧客がつけば、1人なら食べていけます」(同)

「頼れる柱」をつくって生き残る

松田氏は、かつて「自転車の街」と呼ばれた荒川区の要請に応じて、小中学生の社会見学も受け入れれば、地域のイベントにも出席する。都内でも荒川区と墨田区は「最も自転車に乗る人が多い街」だという。

「自転車」という存在には追い風も吹く。一般のクルマのようにCO2(二酸化炭素)を出さず、乗ることで健康にもつながる。課題は「価格への価値」をどう認識してもらうかだ。

「若い世代の間では自転車のイメージはよい。“クルマ離れ”は言われても“自転車離れ”とは言われません。やり方次第で生き残る道はあります」(松田氏)

「LEVEL」のような圧倒的技術がなければ、地域のお客に濃密に寄り添うのも生き残り術だろう。その手本は、たとえば電球1個でも出張して取り換えることで、高齢者世帯の信頼を得て、家電の買い替えにつなげる“町の電気屋さん”かもしれない。

高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
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