これによってアマゾンはホールフーズの店舗を実質的な地域の倉庫拠点として活用できるようになった。つまり、この先に起きることは、アマゾンフレッシュの全米展開である。そしてその先には、全米の食品スーパーの業績が悪化するというアマゾンエフェクトが予測される。

宅配コストを大幅に下げる「アマゾンキー」

2017年11月からは「アマゾンキー」という新サービスも始めた。自宅の鍵をアマゾンが提供する電子キーと交換し、室内にはアマゾンが提供するセキュリティカメラを設置する。そうすると宅配業者は配達先が不在だった場合、ワンタイムの解除キーでドアの鍵を開けて玄関の内側に商品を届けてくれる。

セキュリティカメラとセットになっているので、配達業者による「空き巣」のリスクは小さい。このサービスが本格的に全米に浸透すれば、宅配コストは大幅に下がり、ネット通販市場のさらなる拡大が予想される。

さらに注目されているのが、AIスピーカーの「アマゾンエコー」である。話しかけるだけで、音楽の再生、天気やニュースの読み上げ、アラームのセットなどができる対話型のスピーカーだ。アメリカでは2015年から一般発売され、販売台数は1000万台超のヒット商品になっている。日本では2017年11月に発売された。

アメリカではキッチンに設置しているユーザーが多い。これは「買い物リスト」の機能が便利だからだ。たとえば冷蔵庫に卵がなければ「卵を買い物」とエコーに話しかける。すると買い物リストに「卵」が自動的に追加される。あとはスマホでそのリストを表示してスーパーで買い物をしてもいいし、アマゾンフレッシュやアマゾンキーと連動させて自宅に宅配させてもいい。

徹底的にストレスのない買い物プロセス

アメリカではこれまで書籍、家電、日用品、家具といったジャンルを扱う小売店がアマゾンエフェクトの餌食となって、徐々に業績を悪化させてきた。それと対比してこれまで食品スーパーは比較的アマゾンエフェクトの影響を受けてこなかったのだが、その地位もいまや危ないというわけである。

そして食品スーパーと同様に、アマゾンによってその地位が危うくなってきている業態に、従来型のネット通販がある。理由は、アマゾンが徹底的にストレスのない買い物プロセスを作り上げる投資を続けているからだ。アマゾンなら最安値の商品がすぐに見つかり、その評判も一覧できる。購入すれば宅配網によって迅速に届けられるし、手違いがあった場合の対応もスマートである。

アマゾンでの買い物がここまでストレスフリーになってくると、従来型の通販は、使うのがだんだんと面倒になってくる。それは注文してから数日後に出荷されて、忘れた頃に自宅に届くようなサービスのことである。