また日本の事情でアマゾンが苦戦している分野に力を入れるという考えもある。宅配大手のヤマト運輸は、アマゾンなどネット通販の荷物が急増していることから受託調整を行い、送料の見直しにかじを切った。こうした中で、家電販売大手のヨドバシカメラは、独自の翌日配送網を構築することで、アマゾンよりも安く早く商品を届けることができる体制をすでに構築している。

このままではアマゾンに翻弄されつづけるだけ

では、楽天はどうするか。

楽天が携帯電話事業に参入して、スマホを通じて顧客を囲い込むというのはアイデアとしてはアリだろう。楽天は目標として「1500万人以上の顧客獲得を目指す」としている。しかし「第4のプレーヤー」としてこれから参入するという立場で考えると、3~4年後に想定できる獲得ユーザー数はせいぜい1000万人規模だろう。いずれにしても、これではEC市場の1~2割にとどまる。

同様にビックカメラとの提携で、家電通販の満たされないニーズにこたえるというのも一定の支持が得られるサービスである。しかし難点はそのようなユーザーの構成比が大きくないことだ。結局これらの打ち手だけでは、楽天市場のユーザーの大多数は、やはりアマゾンエフェクトによって刈り取られるのを待つことになってしまう。

もし楽天がアマゾンに本格的に抵抗するつもりなら、本丸である楽天市場での買い物体験をアマゾンよりも快適にすることに力を入れるべきではないか。私にはそれが本筋であると思えるもだが、なぜそうならないのかが疑問である。このままの手の打ち方では、楽天はこれからもアマゾンに翻弄されつづけるのではないか。いまはそんな悪い予感がしているのだ。

鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経営コンサルタント。1962年生まれ。東京大学工学部卒業。ボストンコンサルティンググループなどを経て2003年に独立。過去20年にわたり大手人材企業のコンサルティングプロジェクトに従事。人工知能がもたらす「仕事消滅」の問題と関わるようになる。著書に『アマゾンのロングテールは、二度笑う』(講談社)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)などがある。
(写真=アフロ)
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