「みかん」を検索すると「数珠」が出てくる

失礼ながら、現在の楽天市場はそのような従来型のネット通販業者が少なくない。それには歴史的な理由がある。たとえば楽天市場の商品サーチは昔からずっとあいまいに作られている。商品名でサーチをしても、目的の商品だけではなく、カテゴリーも違うような商品まで検索結果に表示される仕組みになっている。

これは数多ある加盟店のさまざまな商品を表示させる工夫であり、そのプロセスで消費者に別の商品にも関心を持ってもらおうという狙いがある。また楽天市場では「送料込み」での最安値の販売店がどこなのかわかりにくいが、それもわかりにくくすることで価格一辺倒の店舗間競争を抑制することができるからだろう。

現状はどうなっているか。この原稿を書くにあたって、平日の13時に楽天市場で「みかん」を「東京に翌日配送」できる店を検索してみた。すると、上位に表示されるのは「梅干し(みかんはちみつ入り)」、「大型プランター(苗木の育成用)」、「電子タバコのリキッド(みかん風味)」、「数珠(みかん玉)」だった。

こうした環境で買い物を続けていれば、「面倒くさい」と感じる消費者も多いはずだ。それでも楽天は加盟店数の多さと商品点数の豊富さで、他社を圧倒してきた。だから消費者は楽天が使いづらくても我慢してきた。しかしアマゾンの品ぞろえが整ってきたことや、会員制の「アマゾンプライム」の付随サービスが充実してきたことで、「ネット通販はアマゾンで済ませたほうが快適だ」と考える消費者も増えてきているように思う。

「儲かりにくい消費者」だけが楽天に残る

これは楽天のビジネスモデルにとっては問題だ。なぜなら「お金を持っている消費者」「細かい最安値の価格差にこだわらない消費者」は、面倒だが豊富で安いという楽天から、サービスが快適で迅速なアマゾンに移ってしまうからだ。言い換えると「儲けさせてくれる消費者」がアマゾンに移住することで、コストに敏感な「儲かりにくい消費者」だけが楽天に残ることになる。

ではこのようなアマゾンの成長に対して、日本のネット通販はどう対抗すべきなのか。ひとつの着眼点はアメリカでアマゾンがやっていないことに力を入れることだ。アマゾンはグローバル企業なので、日本独自に新しいサービスを始めることは基本的に考えにくい。日本独自の対抗軸をつくれれば勝機はある。

ファッション通販のZOZOTOWNは、2017年11月、採寸用のボディスーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」の無料配布(送料200円)を発表した。伸縮センサーを内蔵しており、着用してスマートフォンに接続することで、全身の寸法を計測することができる。これは典型的な「アマゾンがまだ手がまわっていない領域」での差異化サービスで、これまで「着てみないとフィットするかどうかわからなかった衣類」の通販を、「着る前からフィットすることがわかる商品」に変える試みだ。