日常生活の中に、話を落とし込む
ルーティンワークの中から探すのであれば、「私が営業の電話1本してるうちに、いや、○○さんは5本もしてるんですよ」と話せば、それだけで聞き手には、仕事がテキパキできる人だとわかります。総花的に「彼はまさにジェントルマンで欠点がありません」「本当に前向きな素晴らしい方で」と褒め殺すだけでは、ちっとも面白くありません。エピソード的なところに落とし込んでいくと、日常生活の中のリアルな姿が見えてきて、生き生きとしたスピーチになります。
できるものなら、話に普遍的な広がりがあるものを最後にもってくるとスピーチが締まります。つまり、主役と自分の関係だけではなく、その関係性の中からすべての人が首肯できるような話です。
たとえば、「晴天の友となるなかれ。雨天の友となれ」という言葉は、調子がいいときは人が集まってくるけれども、不遇のときに離れていかない人こそ真の友だといった意味です。
これは、友情関係の普遍性、あるいはサラリーマンとして生きるうえで、自らを律する大切なことを示唆していて、列席者は、そこで何となくストンと腑に落ちるわけです。そんなまとまりをつけられれば、ただの思い出話でなく、具体性の中に、その話をワンランク上の印象にもっていくことができます。
フリーアナウンサー
1950年、宮城県生まれ。75年カリフォルニア州立大学ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業。76年TBS入社。人気アナウンサーとして活躍。89年に独立。講演、イベント司会などでも活躍。東北福祉大学客員教授。著書は『口下手な人のためのスピーチ術』など多数。