先人の言葉や体験を、引き合いに出し褒める
ところで、親しくない人から挨拶を頼まれたり、急に指名されたときに、僕は最近の時事ネタを振りに使います。マイナス金利の問題や中国人の爆買い、民主党と維新の党の合体といった旬の話題や、ビジネスがらみなら業界話をマクラに、「そういう状況の中で、ようこそお越しくださいました」と世間話から始め、「このたびは○○さんがこんなに出世されて」「今度転勤になられる」などと続けるのです。
その先は、先人の言葉を用いて、褒めにもっていくのもいいでしょう。たとえば、「私の大好きだった作家の城山三郎さんの描いた広田弘毅元首相は、戦争回避に動きながらA級戦犯になりましたが、『風車風が吹くまで昼寝かな』という句を残しています。その泰然自若として、わが人生を受け入れるという姿勢には大変共感を受けます。○○さんにもそうした物事に動じないしっかりしたところがあり……」とやるのです。あまり親しくない関係の場合に、その人の環境にふさわしい歴史上の人物の言葉や体験を引き合いに出し、スピーチの中に入れたりするのもひとつの方法です。
あるいは、経済界の方が好きなドイツ出身のアメリカの詩人、サミュエル・ウルマンの「青春の詩」の一節も使えます。「青春とは人生のある時期ではなく、心の持ち方を言う」という言葉を引用しながら、「心の持ちようがいくつになっても青春なんです。○○さんも、まだまだこれからです」と話をもっていってもいいでしょう。
スピーチはあまりにヨイショするとみっともないものですが、褒め称えることが基本です。ただし、褒めるにしてもストレートにもち上げるのではなく、ビジネス界でウケるような言葉を自分なりにうまく解釈して、当てはめることをお勧めします。