腸内細菌と肥満、糖尿病

マイクロバイオームと肥満の関係について調べている科学者たちからもエキサイティングな知らせが届いている。イスラエルの科学者、エラン・シーガルとエラン・エリナフによる最先端の研究によれば、腸のマイクロバイオームは、特定の食品に対して血糖値がどう反応するかに関係していることがわかった。たとえば、あなたはわたしよりもオレンジを食べたときの血糖値の上がり方が激しいかもしれないが、全粒パスタを食べたときはその逆かもしれない。これはマイクロバイオームの差なのである。

この画期的な発見は「DayTwo」というベンチャーの設立にもつながった。個人のマイクロバイオームと特定の食べ物を摂取したときに血糖値の反応を分析し、食事療法のアドバイスをする。この「食事のパーソナライズ」というイノベーティブなアプローチは、食習慣を厳密に調べ、血糖値を測るために医師による血液検査をおこない、マイクロバイオーム分析のためにサンプルキットを使って少量の便を提出するというものだ。

シーガルとエリナフらはまた別の研究で、通説に反して、人工甘味料はブドウ糖不耐性、つまり糖尿病の初期症状である高血糖の原因となることを突き止めた。これには腸内細菌の働きが関係している。この研究結果は当然ながら人工甘味料のメーカーには歓迎されず、また、高血糖や糖尿病につながる肥満を予防するために人工甘味料を使っていた消費者にとってもよい知らせではなかった。

研究結果に懐疑的な人たちは、人間とは明らかに異なる生き物であるマウスでの実験なので信憑性がないと指摘する。しかし、最近カナダでおこなわれた3000人の母子を対象とした調査で、妊娠中の人工甘味料の摂取と子どもが1歳のときの体重に強い相関があることが判明した。これは母親の体重、摂取カロリー量、ダイエットといった他の肥満リスクファクターによる影響を取り除いたうえでの結果である。これらの結果は他の人間を対象にした研究で実証されなくてはならないが、調査の規模と設計を考えると、妊娠中および幼少期の人工甘味料の摂取は極力控えるべきということがいえるだろう。

さらにこの二人の研究によって、なぜ特定のマイクロバイオームを持つ人は太りやすく痩せにくいのか、という問いへの理解も進んでいる。わたしたちの多くが、年末年始などの休み中に暴飲暴食をしたあとで体重を落とそうとダイエットに励む。あるいは、年中ダイエットをして痩せてはリバウンドを繰り返したりして結局元の体重にとどまっている。こうした短絡的なダイエットは結局失敗する。

マウスを使った興味深いある実験で、シーガルとエリナフはダイエットが成功して体重が落ちたあとも、生き残ってリバウンドを助ける働きをしている細菌が存在することを確認した。まだわかっていないことも多くあり、しつこいリバウンドを引き起こす犯人となっている細菌を特定しなくてはならないが、この研究結果は非常に重要だ。わたしたちも嫌々ジムに通う生活を続けながら注目している。