メモさえあれば誰でもクリエーティブに
こうした工夫をして記録メモを取れれば、次にメモを生かして新しいアイデアを練るのも難しいことではない。
この段階で効果絶大なのが「ハードルメモ」と呼んでいる手法だ。「なんでもいいから自由にアイデアを出して」と言われると、かえって考えが浮かばないのが人間というもの。私自身もそうだ。考える目的をはっきりさせて、あえて超えるべき「ハードル」を課すことで、無意識にそれを超えようとするため、アイデアの質がグンと高まる。
忙しいビジネスパーソンにも便利な、3秒で書けるハードルメモがある。それは目の前の課題を「それは本当に~か?」に当てはめるだけでいい。例えば先ほどのスケボーの話でいえば、単に「大人にスケボーを売るには?」ではなく、「それは本当に40代のおじさんがスケボーに乗る企画か?」と最初にメモする。このほうが、がぜんアイデアが湧いてくるのだ。
自分が会議を主導する立場であれば、会議名自体をこの形式にするのがお勧めだ。私は必ずそうしている。課題設定が明確になり、「~だから絶対乗りますよ」とか「~だから無理なんじゃない?」など、具体的で建設的な意見が出やすくなる。
自分が会議名を決める立場にはなく、単に「スケボー企画会議」といったタイトルで招集されているとしても、自分の中では「それは本当に~?」という課題設定に落としこむことを習慣づけるといい。そうすれば、同僚が凡庸な意見しか言えないなか、自分だけ本質をつくアイデアを次々に出せるようになる。
新しいアイデアが求められているのは、広告業界、企画開発やマーケティングなど、いかにも「クリエーティブ」な業種や職種だけではない。総務部なら、「それは本当に育休取得向上につながるのか?」「それは本当に経費を15%削減できるのか?」といった課題設定ができるだろう。
1968年生まれ。大阪大学卒業後、93年に博報堂入社。2006年に独立しPOOL inc.を設立し代表就任。主な仕事に、サントリー「伊右衛門」「ザ・プレミアム・モルツ」、TOYOTA「もっとよくしよう」、ライザップなど。著書に『すごいメモ。』ほか。