子どもは干支(えと)1回り分の人生しか生きていない
母の念力フレーズ3:
「(この本の)主人公の名前ってなんだっけ?」
もうひとつのおすすめは隙間時間の活用です。
やはり子どもですから、ゆるい時間や休み時間は必要です。私が多くの受験生を抱える母親をサポートしてきて感じるのは、デキるお母さんはそうした“修羅場”の期間に、効果的な“えさ”をばらまく策士であることが多いのです。
たとえば、漫画本。学習漫画や『ドラえもん』でもいいのですが、おすすめは、吉野源三郎さんの名著『君たちはどう生きるか』の漫画版(マガジンハウス刊)や、作家あさのあつこさんの小説『バッテリー』などの漫画版(角川コミックス)です。
中学受験頻出の作家の作品で漫画になっているものはけっこうありますし、母から見ても「中身がある」と感じる上質な漫画ってありますよね。
ただ、そういうものを、少しでも受験対策になると見て、親が「読め」と命令しちゃだめで、ただ、リビングの床やダイニングテーブルの上に置いておくのです。子どもがそれを手にとっても、母は何も言わない。見ているんだな~、ぐらいで自然体で過ごし、読み終わったら、「主人公の名前ってなんだっけ?」と雑談風に聞いてみるのです。「この話、ここの場面で盛り上がったよね~」などと一緒に内容の話ができればより楽しいものです。
母の念力フレーズ4:
「お母さんも過去問、解くよ」
要は、お小言を言う暇があったら、どうすれば子どもがリフレッシュするか考えるのです。後方支援部隊として、子どもの「手当て」をするのが任務ですが、たまには前線に立ってみるのも悪くないかもしれません。
「お母さんも過去問、解くよ」
子どもの志望校の「過去問」を解いてみるのです。ここまできたら、親も泥沼につかってみる。正解できるかどうかは関係ありません。共に脳に汗をかくのです。一緒にもがきながら、「こんな問題も解けるようになって、そこをベースに6年間さらに発展的なことを学べるなんてすてきだねえ」と子どもと話してみれば、同志的な存在を得た子どもは意気に感じてくれてもうひと踏ん張りにしてくれるかもしれません。
最後の最後、「合格していく力」は母親が作っていく。塾の力を借りながら、家族全員で合格レベルにまでぎりぎり押し上げる。繰り返しますが、子どもは12歳です。干支(えと)1回り分の人生しか生きていません。“弱者”をいい意味で化かせるために、絶対的な味方である母が最大限バックアップする。それが、中学受験というイベントなのだと私は思います。