刺激的な番組を数多く手がける倉本美津留さん。常に笑いや発見を届けようと考えを巡らせている。そんな倉本さんが考える、面白い話の極意とは?

相手の心をつかむ話は入り口に工夫あり!

面白い会話って何かと考えると、眠っていた脳細胞が1つでも動きだすような、そんなコミュニケーションだと思うんです。それがなければ、何のために時間を使っているのかと思ってしまう。だから、人と話すときは「本題までのつなぎをなんとなくいい感じに」なんてちょっと後ろ向きな気持ちは持たないこと。どうせ話すなら、「この人と会ってよかった!」って思いたいし、相手にもそう感じてもらいたいでしょ。

倉本美津留●「ダウンタウンDX」「M-1グランプリ」「浦沢直樹の漫勉」、Eテレの子ども番組「シャキーン!」など、数多くの番組を手がける放送作家。『倉本美津留の超国語辞典』(朝日出版社)など著書多数。

僕が面白いなと感じるのは、知らなかったこと、あるいは漠然と感じていたけれど言語化できていなかったことを、言葉にしてくれる人。宇宙物理学者の佐治晴夫先生に「未来は変えられないけれど、過去は変えられる」という話を伺ったことがあります。「逆でしょ?」と思うけれど、お話を聞いているうちに納得する。キャッチーな結論を入り口にして、物理の世界へと導いていってくれるんです。だから話すときには、入り口も大切ですね。どこを入り口にしたら入りやすいか、と考えてみる。それだけでも、話し方は格段にうまくなると思います。

あとは、自分自身が楽しくなるような話し方をすること。面白いことを伝えるって、自分の経験や感動の再現。その瞬間の驚きや空気感まで伝えられたら、相手もおのずと引き込まれると思うんです。だから、芝居がかってもいいし、声が高くなってもいい。単なる説明にしないことが大事です。そして、日常のあちこちに「おもしろ」を捕まえるセンサーを張ること。そうすれば、どんどん人に伝えたいことが増えていく。場数を踏むたびに、しゃべりのコツがわかってくる。好スパイラルに乗って、ぐんぐん面白い人へとレベルアップしていくはずです。