営業において、「聞く」と「話す」ではどちらが大切なのか。かつてリクルートで活躍した竹内孝太朗さんは「“聞くが8割、話すが2割”などとも言われるが、このノウハウが当てはまらない商品も存在する。自分から10割話をすることが必要になるケースもあるので、最適解を見つける必要がある」という――。

※本稿は、竹内孝太朗『営業スキル検定』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

ヒアリングだけでは顧客は困ってしまう

よく聞くのが、流暢な営業トークで顧客を口説き落とすのではなく、顧客によくしゃべっていただいて、そこから顧客のニーズを聞き出すというノウハウです。

例えば「聞くが8割、話すが2割」「一言もしゃべらないのが理想の営業」といった内容が書かれている本があります。

しかし、このノウハウが当てはまらない商品も存在するのです。

例えば弊社商品でも新規領域・新規コンセプトの商品があります。

私自身、営業としてそのような商品を複数扱ってきたからこそ言えるのですが、そのような新規領域・新規コンセプトの商品を売るときに、そもそもニーズを聞き出そうとしても、信頼関係もなく、何者かもわからない人間から、意図も目的も明かされず一方的にヒアリングされては、顧客は困ってしまうのです。

少なくとも、何を目的にこの商談の時間をいただいているのか、素性を先に明かす必要があります。

握手するビジネスパーソン
写真=iStock.com/alvarez
※写真はイメージです

自分から10割話をすることが必要

知名度もあり、顧客からの信頼が積み上げられている大企業で営業として働いている、もしくは、顧客と個人的なつながりがあるといった場合には、「あなたの意見を聞かせてください」と商談で言えば、何らかの答えをもらえるかもしれません。

しかし信頼関係の築かれていない段階でそんなことをお願いしても、「何で、君に話さないといけないの?」と思われてしまうのがオチです。

「このことであればあの会社に相談する」とか、「誰々に相談する」といった合意形成がすでになされていて、初めてヒアリングができるわけです。またそうやってヒアリングができて初めて、顧客のニーズも聞くことができるわけです。

しかし新たな領域にアプローチしている会社であれば、「そもそもあなたは何者ですか?」「あなたの会社、聞いたことがないんですけど」といったフェーズから営業することが多いでしょう。

このフェーズでは、自分から10割話をすることが必要になります。自分という営業についての説明や、自社および提案する商品の価値を流暢、かつ端的に説明することが肝心な場合もあるのです。

つまり自社に対する信頼が、狙っている市場ではまだ形成されていなかったり、自分という営業への信頼がまだ得られていなかったりする段階では、「聞くこと」よりも「こちらからたくさんの情報をアウトプットすること」が必要になるわけです。