(2)悪条件下での成功ケースを引き合いに使う
変化に後ろ向きな人の心を動かすのは、絵にかいたような好条件下での成功事例ではありません。そのような事例は「それは、あの会社(部署)だからできることでしょ」という反発を生み、自職場が変化・進化できない理由を“条件がそろってないから”として正当化させるだけです。
「どうせムリ」の気持ちを変える効果的な事例は、生産性・売上高などの数値が他部署よりも劣っている、社内や業界でのポジションが低かったり長年人員補充がされず風土が停滞しているなど、悪い条件下での一発逆転の成功事例です。
弊社のある顧客企業では、単純作業が多く顧客クレームの責任も押し付けられがちで、社内で最も士気やポジションが低い職場で活動をスタートしました。活動開始にあたっては、「1人の落ちこぼれもださないように」「数値成果は一切求めない」というトップ方針によりプレッシャーを極力排除。最初は後ろ向きだった職場のメンバーたちでしたが、弊社のトレーナーたちと身近で成果がわかりやすいテーマに地道に取り組む中で小さな成功体験を積み、徐々に前向きになっていきました。そして、ロット生産から1個流し生産など高次元の活動にも取り組むようになりました。この職場での成功事例は「あの部署ができるはずがない」と決めつけていた周囲の部署へも多いに刺激となり、全社の「どうせムリ」を一掃して活動を全社に拡大させたのです。
このように、悪条件下での成功事例は、その周囲に焦りを生み、「どうせムリ」をなくす大きな原動力になります。自社内や業界内で、このような事例を探してみてください。
(3)「どうせムリ」の背景にある理由を見極める
「どうせムリ」という気持ちをもっている人も理由は様々で、「どうせムリ」の払拭も一筋縄ではいきません。ここでは代表的な2つのタイプへのアプローチをご紹介します。
1つ目は、スキル・経験が未熟で自信がない場合で、仕事の経験が少ない若手によく見られます。この場合は変化自体に反対しているのではなく、その変化を担う自分自身が関門なのです。本当は一歩を踏み出したいものの、失敗が怖くて一歩を踏み出せないのです。彼ら・彼女らに対して有効なのは、失敗リスクを減らしてあげること。このタイプは年齢も若く先入観が少ないケースが多いので、不安材料を減らしてあげれば機動的に活動に取り組むケースが多々見られます。
弊社のある顧客企業では、若手をリーダーにした場合には、経験豊富なベテランをバックアップにつけた上でチームにしていました。そうすることで、両者が補完しつつ長所を発揮することができていました。若手の機動力やチャレンジ精神と、ベテランの経験や人脈が活きるのです。