自動車業界は世界を巻き込んだ大競争時代に突入した。日産自動車はエコカーで本命視される電気自動車(EV)で先行。ホンダはハイブリッド車、燃料電池車で先行し、EVを含めた全方位作戦。トヨタ自動車を追走する日産、ホンダはこの大競争時代をどう生き抜くか。『図解!業界地図2018年版』(プレジデント社)の著者が分析する――。

日産は初の販売台数世界一を狙う

今回は日産自動車とホンダのエコカー戦略にスポットを当ててみよう。日産は今年9月、完成車検査における不正問題を公表し、約120万台リコールに追い込まれている。だが、これまではエコカーで本命視される電気自動車(EV)で先行し、追い風を受けていた。

ここでは2017年3月期の決算数値から、日産とホンダの実力を図ってみたい。まずは、企業規模を確認しておこう。

日産自動車は提携関係にある仏ルノーと三菱自動車の3グループ合計で、2022年の世界販売台数1400万台の目標を掲げる。3社連合は17年通年で1000万台を突破し、ドイツのフォルクスワーゲンやトヨタ自動車を上回り、販売台数世界トップを初めて奪取する流れだ。

ただし、日産の連結決算上の販売台数そのものは、400万台前半での推移。ホンダはさらに下回る300万台半ばである。

ホンダの場合は、二輪車の販売もあることから売上高で日産を上回るが、それでもトヨタ自動車のおよそ半分。当期純利益ともなれば、日産、ホンダともトヨタのおよそ3分の1だ。

キャッシュフロー計算書における減価償却費の計上額は、トヨタ1兆6000億円、日産8400億円、ホンダ6700億円。この減価償却費は基本的に、経費として計上するが実際には出金がないことから、経営成績を判断する場合に利益に加算したり、投資可能額の目安となったりする。

相殺消去という会計処理をするため連結決算には示されないが、日産とルノーは相互に配当金を受ける。日産の場合は三菱自動車からの配当金もある。こうした出資先からの受取配当金は、日産約2500億円、ホンダ3200億円弱だ。

子会社は売上高から利益まですべて連結決算に加えるが、関連会社の場合は、投資割合に応じて「持分法投資損益」として、利益だけを取り込むことになる。その持分法投資損益は、日産とホンダは1500億円前後だ。

一方、トヨタが単独で得る年間受取配当金は8000億円弱。持分法投資損益は、3620億円である。そもそも、グループを構成する子会社や関連会社数が異なる。トヨタの場合は、ダイハツ工業や日野自動車など子会社は597社。デンソーやアイシン精機、豊田通商といった関連会社は200社。合計では797社である。それに対して、日産の子会社・関連会社は223社、ホンダは442社だ。