神戸製鋼所の「不正発覚」が止まらない。大規模なリコールや訴訟に発展する恐れがあり、経営問題に発展するのは必至だ。ジャーナリストの鎌田正文氏は「対応が後手後手だ。エアバッグ大手・タカタの経営破綻を想起させられる」という。神戸製鋼も同じ道を歩むのだろうか。その経営体力を緊急分析する――。
長期間の「品質偽装」はなぜ見過ごされたのか
「信頼される技術、製品、サービスを提供する」
神戸製鋼所が、持続的発展を目指して17年度に改めて策定した行動指針、3つの約束のひとつである。
アルミ・銅製品や鉄鋼製品など納入品の品質検査データ改ざんが次々と明らかになってきた今となっては、ホームページにあるような「本件不適切行為に関するお詫び」といった、神戸製鋼1社の謝罪だけで済む話ではない。たとえば問題製品を出荷した子会社のコベルコマテリアル銅管は、非鉄金属国内最大手の三菱マテリアルとの合弁運営だったのだ。
疑惑の目は日本の製造業全体に向けられつつある。日本の信用を傷付けかねない深刻な問題といっていいだろう。
神戸製鋼は、新しい製鉄法(新還元溶解製鉄法)を商品化したり、これまでにない方式を採用して短期間での高炉改修を実現したりするなど、技術開発力には定評があると思われていた。それだけにギャップは大きい。
自動車のボンネットなどに使用されるアルミ板については、国内の自動車メーカーが安全を確認しつつあるものの、一部製品については強度不足などが判明。日本工業規格(JIS)の認証取り消し問題まで事態は進んでいる。顧客離れなど経営問題に直結するのは避けられない。
刑事捜査に発展する可能性もある。航空機製造の米ボーイングなど納入先は米国企業にも及んでいるため、すでに米司法当局から関係書類の提出を求められている。米国の基準で“クロ”と認定され、司法取引による制裁金が科されるリスクはゼロではない。