不正発覚で業界再編、事業のバラ売りも
「鉄とアルミ」――自動車の向けの鋼材やアルミ製品の両方を手がける企業は世界でただ1社、神戸製鋼に限られる。半面、それぞれの事業規模となると、ライバル企業に劣る。
神戸製鋼の鉄鋼事業の売上規模は6000億円弱。4兆円強の新日鉄住金や約1兆5000億円のJFEホールディングス(HD)には遠く及ばない。鉄鋼業の指標である粗鋼生産量でも、新日鉄住金とJFEHDとは大差がついている。
鉄鋼メーカーの象徴である高炉を運営する国内企業は、新日鉄住金、JFEHD、神戸製鋼、日新製鋼の4社だが、日新製鋼が新日鉄住金グループに入ったことで、神戸製鋼は国内最小の高炉メーカーになった。今年の11月からは高炉1基休止し、2基体制に移行した。
アルミ板を薄く延ばす圧延品では、UACJに次ぐ国内2位である。ただし、13年10月に古河スカイと住友軽金属工業が統合して誕生したUACJは、米国における自動車用アルミニウム構造材および各種アルミニウム部品製造販売会社を買収するなど規模を拡大し、神戸製鋼の先をいく。そのUACJにしても、世界トップを競う米国勢のアルコアとノベリスに大きく引き離されている。アルコアの売上高は約2兆5000億円、ノベリスは1兆円である。
神戸製鋼も自動車向けなどアルミ板事業の拡大に向けて米国での生産設備増強を決定するとともに、ノベリスとは韓国で合弁会社を設立するなどの動きを見せいているが、世界大手との差は大きい。
油圧ショベルなどの建設機械にしても神戸製鋼の売上高3103億円に対し、世界トップ級のコマツはその5倍規模である。
電力事業では、すでに大型原子力発電1基を上回る発電規模を誇り、着手したプロジェクトなどが完成すれば、大型原発4基相当の発電規模になる。ただし、その電力のほとんどは関西電力への供給であり、あくまでもサイドビジネスという位置づけだ。
今年7月末には、新年度に入って業績が上向きに転じたとして、18年3月期通期の予想純利益を300億円から350億円に上方修正していたが、10月末に撤回。状況によっては、3期連続の赤字も避けられないようだ。
今回の不正発覚で、神戸製鋼が失うものはあまりにも大きい。事態の収拾や全容解明にはまだしばらく時間が要することは確実で、その間、経営の屋台骨が大きく傾き、業界再編や事業のバラ売りといった事態を招く恐れもある。