大河ドラマよ、雪国の心を忘れるな

ただしひとつだけ、これだけは表現してほしいと頼みました。

小説に書いた「雪国の心」です。

雪国で暮らす人々にとって雪は重く苦しいものです。豪雪地帯の越後は、水気を含んだ雪の重さで屋根がきしみます。だから屋根にのぼって雪下ろしをするのが男たちの冬仕事になる。たいへんな重労働です。家々の屋根から下ろされた雪は、やがて軒よりも高く積み上がっていく。雪下ろしをしてできた道のほうが屋根よりも高くなるという雪国ならではの奇観。そんな環境だから冬場はじっと耐えて我慢するしかない。

そこで力を養って、春に美しい大きな花を咲かす。それが「雪国の心」です。その一点だけを忘れないでくださいと。

それが、実に見事に表現されています。

細かい場面でも、全体の流れでもよく表現されている。上杉景勝はほとんどしゃべらなくて、笑ったところなど一度しか見たことがないと家臣に言われる武将ですが、彼の芯の強さ、我慢強さなどは「雪国の心」を重ねて、よく表現されていると感心しました。

もうひとつ、水と米が良い越後といえば酒です。原作には酒の場面が多く出てきます。嬉しかったのは、原作を読んだ妻夫木さん、北村さんが酒を飲んで語り合うところから役作りを始めたと(笑)。越後の酒を酌み交わして、原作の世界を理解しようとしてくれたんですね。

(構成=須藤靖貴)