アフリカの原野から10万年ほど前に飛び出した人類は、約5万年前にヒマラヤ山脈を挟んで南北に分かれて拡散した。そして新天地の日本列島にやってきたのだが、本書は日本人のルーツを探る見事な科学ドキュメンタリーだ。

著者は人類学者で、人骨化石などを通じて東アジアの人類研究で世界的な業績を挙げてきた。特に欧米偏重の定説に疑問を持ち、グローバルな視点と実証によって新たな人類史を編む達人だ。

その研究手法は極めて緻密である。遺跡や化石、さらに昨今飛躍的に進んだDNA解析を駆使して議論を展開する。科学者が信頼のおける事実に基づいて新しい成果を出すのは、まず最初にあるべき姿である。その部分は本書でも雄弁に語られ、説得力を伴った実証に成功している。

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