図表3は労働時間が1割以上増えた人、増減が1割以内、1割以上減った人に分けて、それぞれで、生活満足度の変化を示している。
労働時間が1割以上減った人のうち29.6%は生活満足度が上がっている。生活満足度が上がった人の割合は、労働時間がほとんど変化していない(増減が1割以内)グループにおいては26.0%、1割以上増加したグループにおいては26.4%であるので、生活満足度が上がっている人は、わずかではあるが多いといえる。その意味では生活満足度については若干の改善が見られると言ってもいいだろう。
改めて問われる労働時間削減の意義
労働時間が減少したからと言って、仕事満足度は大きく改善せず、生活満足度は若干改善するにすぎない。労働時間の削減を、仕事満足度と生活満足度の向上につなげるにはどうしたらよいのだろうか。
今の課題は、労働時間削減の意義が、個人によって異なっており、職場全体で目指す世界が共有されていないことだと考える。つまり、(1)個人にとって望ましい働き方が違うという前提を踏まえ、(2)職場全体としてゴールを設定(3)個人の意義と職場全体の意義を満たす制度設計や対策をとることが重要なのだが、このどれかが欠けていることが多いようだ。
労働時間削減の意義は、(1)上限設定や生産性向上により労働時間を削減し、(2)生まれた時間で、趣味・育児・家事・副業/兼業などに時間を使うことができ、多様な経験を持つようになり、(3)多様な経験を持った個人が組織の中で持ち味を生かして活躍することで、企業組織の中でもイノベーションが起こる、といったステップの中の第一歩と位置付けられる。
労働時間削減の意義や生まれた時間で何をするかは人によって異なる。しかし、組織としてのゴールは従業員の間でコンセンサスを取る。