国を挙げた大きなテーマになっている「働き方改革」。なかでも、過労死にもつながる労働時間の削減は急務だ。もちろん過重な長時間労働は是正されるべきだが、実際に労働時間が減った人の仕事や生活の満足度は上がっているのか。リクルートワークス研究所が2015年と16年の働き方を比較したところ、一筋縄ではいかない課題が見えてきた――。
労働時間削減の課題と、その先にあるもの
「働き方改革」の一つの柱である労働時間削減について、いくつかの議論が巻き起こっている。今年3月までの働き方改革実現会議において決定した残業時間の上限規制については、月100時間を超えないなど過労死ラインを考慮した規制であり、働きすぎによる健康悪化を防止する意味では大きな意義がある。緩すぎるという意見もあるが、過労死ラインを越える労働時間が常態化している職場においては労働時間削減が急務であるといえる。
過労死ラインを越える労働時間が常態化している職場は限られているかもしれないが、多くの企業では、上限規制にかかわらず労働時間削減に本腰を入れている。しかし、労働時間削減の目的や方法は従業員個人個人の判断によるところが大きく、一丸となって労働時間削減にとりくんでいる職場は少ない。ある企業の人事担当者は、「労働時間を削減するために、残業禁止などまずは限度を決めて、その中で社員一人ひとりが労働時間削減の工夫をしてほしい」と語っているが、持ち帰り仕事といったサービス残業の実態は把握できていないなど、課題は多い。
企業において、実際に労働時間が減った人は、仕事や生活満足度の改善が見られるのか。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」の2015年と2016年の変化を見ることで、確かめていきたい。
労働時間が長い人ほど翌年には時間が減少
まずは、2015年12月の労働時間に対して、翌年2016年12月の労働時間がどれだけ変化しているか見ていこう。図表1(次ページ参照)は2015年12月と2016年年12月の一週間あたり労働時間を比較して、その増減をまとめたものだ。60歳未満の正社員に限定して集計している。