労使に委ねられた「働き方改革」の次の一手
「働き方改革」の実現に向けて、日本全体が大きく舵を切っている。2017年3月、総理を議長とし、有識者、労使の代表者から構成された働き方改革実現会議での議論が「働き方改革実行計画」としてまとめられた。そこでは、働く人の視点に立って、検討すべき9つのテーマが提示され、具体的な施策と2020年時点の数値目標が掲げられた。
これを受けて、2017年6月、厚生労働省の労働政策審議会分科会が、残業時間の罰則付き上限規制などを盛り込んだ報告書を取りまとめた。厚生労働省は法案づくりに着手し、政府は国会の審議を経て、2019年度の導入をめざすという。
長時間労働の是正は、積年の課題であった。にもかかわらず、「人手不足だから仕方ない」「業務の性質上、やむを得ない」といったある種の諦めが労使に支配的であった。今回の法改正は、これを構造的な問題と捉えて、個別の働き方だけでなく、企業文化や取引慣行の見直しも迫るものであり、「働き方改革」のボールは、いよいよ現場の労使の手に委ねられたといってよいだろう。
仕事を3つに分解する―本来業務、周辺雑務、手待ち時間
長時間労働の是正に向けて、何にどのように取り組めばよいのか。経営トップの意思表明、マネジメントの見直し、ITの導入など、さまざまな施策が打ち出されている。しかし、これらの施策がすべての現場で一律に有効となるわけではない。働き方改革における課題は各社各様であり、働き方の実態に沿った取り組みが求められているからである。
では、働き方の実態をどのように把握すればよいか。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2017」では、週当たりの労働時間の把握に加えて、仕事の分解を試みた。具体的には、それぞれの仕事を、(1)本来の担当業務で成果と直結している仕事、(2)周辺的な雑務、(3)待機や客待ち等の手待ち時間に分けて、合計が100になるように割合を調べた。その結果、図表1、2の通りである。平均的には、本来業務74.3%、周辺雑務17.9%、手待ち時間7.8%であった。つまり、本来業務以外が約25%を占めており、そこに仕事効率化の余地が見いだされた。以下、詳しくみてみよう。