パターン(5):教育訓練のあり方を見直す

教育訓練が長時間労働を促進している側面に鑑みると、教育訓練の在り方を見直すことも有効だろう。

医薬品営業、保険営業は、手待ち割合がそれぞれ21.1%、15.1%と比較的高い。その一方で、OJTにも積極的である。製品・商品知識のアップデートが不可欠な仕事ゆえ、手待ち時間を教育訓練に充てることで、総労働時間を削減することができるだろう。

働き方改革とは「本来業務」を追求し続けること

ここでは、「働き方改革」の実現に向けた手がかりとして、本来業務、周辺雑務、手待ち時間に着目し、労働時間削減の5つのパターンを例示した。仕事の3分割は、施策を講じる際に考慮すべき、働き方の個別事情を推察するきっかけとなりうる。最後に強調したいのは、仕事の3分割の効用は、パターンの例示にとどまらず、仕事の付加価値がどこにあり、どの業務に充実感をもっているかについて、働く人それぞれに問うところにある。「働き方改革」は、外から与えられるものではなく、「本来業務は何か」を自ら問うて追求し続けることで実現されるものではないだろうか。

久米功一(くめ・こういち)
東洋大学経済学部総合政策学科准教授。1973年生まれ。2008年大阪大学大学院修了(博士、経済学)。2017年より現職。専門は労働経済学、行動経済学、経済政策。多様な働き方、労働と価値観、テクノロジーと雇用などを研究テーマとする。
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