「総理のご意向」の疑いは晴れない
読売社説とは違い、加計疑惑の解明を強く訴えるのが、朝日新聞や毎日新聞、東京新聞の社説である。
朝日社説(11月11日付)は「『加計』」開学へ」というテーマに対し、見出しで「これで落着とはならぬ」とはっきりと言い切る。
冒頭で「はっきりさせておきたい」と書き、こう訴える。
「来春開学の見通しになったからといって、あの『総理のご意向』をめぐる疑いが晴れたことには、まったくならない。問われてきたのは、設置審の審査をうける者を決めるまでのプロセスが、公平・公正だったかどうかということだ」
実に分かりやすい。読売社説に比べ、本音で主張しているからだろう。
疑念解明は設置審の役割でない
朝日社説は加計疑惑の核心をこう示す。
「国家戦略特区の制度を使って獣医学部を新設する、その事業主体に加計学園が選ばれるにあたり、首相や周辺の意向は働かなかったか。逸脱や恣意が入りこむことはなかったか――」
そのうえで文科省の大学設置審の役割を分かりやすく説明していく。
「疑念に白黒をつけるのは、設置審の役割ではない。教員の年齢構成や経歴、科目の体系などを点検し、期待される教育・研究ができるかを専門家の目で判断するのが仕事だ。見る視点や材料が違うのだから、特区選定の正当性を裏づけるものにならないのは当然だ」
設置審の「警告」が「留意事項」に
次に朝日社説は「きのう公表された審査資料によって、見過ごせない事実が新たに浮上した」として、読売社説がはっきりと触れなかった「事実」についてこう指摘している。
「設置審は今年5月の段階で、加計学園の計画について、抜本的な見直しが必要だとする『警告』を突きつけていた。修正できなければ不認可になる問題点を7つも列挙していた」
ここでのポイントは「警告」という表現だ。読売社説は「留意事項」と書き、「警告」とは書いていない。なぜ今年5月に設置審が出していた「警告」という言葉を書かず、「留意事項」の説明にとどめたのだろうか。安倍政権の擁護を前提とするあしき体質から抜け出せていないからだろうか。これだから社説は読み比べる必要がある、と沙鴎一歩は思う。
さらに朝日社説は「政府は国会などで『加計の計画は、競合する他の大学よりも熟度が高いと判断した』と説明してきた。設置審の見解とのあまりの乖離に驚く」と書く。
政府と設置審の大きな相違。ここを指摘しなければ、新聞の社説とはいえない。