ひとりの意見だけで動いてはいけない

一方、訴え出た社員以外に「臭う」と証言する人がいないときは、より慎重に事を運ばなければなりません。訴え出た人の嗅覚が特別に敏感なのかもしれず、その場合は「臭う」とされた人から席を離すとか、異動するといったかたちで解決することになります。

厄介なのは、特定の相手の臭いだけに極端に敏感になっている場合です。「課長の整髪料の臭いがつらい」という相談を受け、その職場の部長が臭いを確認すると、整髪料は微香性であり、臭いは感じられなかったそうです。ところが被害を訴える女性社員は、真冬なのに窓を開け放って換気するほど拒絶反応が強い。このときは2人の人間関係に問題がありました。

そこで部長は、課長のほうから女性社員に歩み寄るようアドバイスしました。課長は妻にも相談して無香性の整髪料に変え、また仕事の丸投げをやめて、相手の話をよく聞き、丁寧にアドバイスやフォローをするスタイルに変えました。すると女性社員の態度が軟化し、臭いの問題は解消され、2人の人間関係も良好になったのです。

樋口ユミ●ヒューマン・クオリティー代表取締役
1993年、立命館大学産業社会学部卒業。立命館大学キャリアセンター職員などを経て、2008年から現職。最近の著書に『ハラスメント時代の管理職におくる職場の新常識』(朝日新聞出版)がある。
 
(構成=野崎稚恵 撮影=大杉和広)
関連記事
もしも上司に「ハゲー!」と罵られたら
真夏の決闘!スメハラ男vs.臭いヒステリー女
キャバ嬢18人が語る!「カッコ悪くて、カネもなし」でもモテるコツ
「ファーストクラスに歯槽膿漏の人はいない」は本当か?
歯のケアをすると、なぜエリートになるか