「臭うのは君だけじゃない。ぼくも一緒だ」

まず当人に直接指摘するのではなく、職場全体の問題として注意を喚起します。具体的には職場のマナーを徹底するための貼り紙をつくり、その中に、「あなたの臭いが周りの人に迷惑をかけていませんか?」といった内容を加えてみるのです。

さらに朝礼や社内報で「臭いは自分では気づきにくいもの。家族や親しい友人に、あなたが臭っていないか聞いてみましょう」と全社員に周知する。それによって当人が自分で臭いに気づき、毎日風呂に入ったり、消臭機能を持つ衣料品やデオドラント製品を使用したりすることで臭いが消えれば、無事解決となります。

これで解決に至らない場合は、当人に告知します。たとえば誰もがわかるような強烈な腋臭の持ち主のケースがありました。この人は社歴数十年のベテランで押しの強い男性なので、なかなか本人に直言できませんでしたが、社員からの訴えを受けて人事部長が腹をくくりました。こう伝えたそうです。

「君の腋臭が気になると社員から相談を受けてね、ぼくも自分の臭いが気になって家内に聞いたら、案の定、『最近とくに臭いがきつくなった』と言われたよ。一緒に改善していかないか」

プライドを傷つけられた当人は「そんなこと、家族にも言われたことがない!」と激怒したそうですが、家族に確かめるとやはり家族も我慢していたことがわかりました。そこでその方も、自分の臭いが周囲に迷惑をかけているという事実に気づきました。人事部長と相談し、すぐに腋臭除去の治療を受けたと言います。これで解決です。

人事部長の腋臭はそれほど強いものではなかったのですが、「臭うのは君だけじゃない。ぼくも一緒だ」と相手に伝えるデリケートな思いやりが、早期解決を助けたのだと思います。